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クロマグロ禁輸、EU支持 「回避」一層困難に

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 欧州連合(EU、加盟27カ国)が大西洋(地中海を含む)クロマグロの国際取引禁止を支持する方針を決めた。禁輸による保護を求める環境派加盟国の圧力を前に漁業国が譲歩した形だ。大票田のEUが足並みをそろえたことで、13日からカタール・ドーハで開かれるワシントン条約(CITES)締約国会議で取引禁止が決まる可能性が高まり、禁輸回避を目指す日本は窮地に追い込まれた。【行友弥、太田圭介、ブリュッセル福島良典】

 ◇反対派は「多勢に無勢」

 「これでクロマグロの保護派が大勢になった」。環境保護団体グリーンピースの海洋問題担当者は、EUの合意により締約国会議で禁輸が決まる可能性が高まったと分析する。

 ワシントン条約の締約国175カ国のうち会議に出席するのは150カ国程度とみられる。棄権を除く投票数の3分の2、100カ国程度の賛成があれば、クロマグロの取引禁止が決まる見通しだ。すでに、交渉に大きな影響力を持つ米国は禁輸支持を表明している。EU加盟27カ国が賛成に回った上、欧州諸国を旧宗主国とするアフリカなどにも取引禁止を支持する動きが広がっている。

 大西洋クロマグロの取引禁止は、EU非加盟国でマグロ漁にも無縁な小国モナコが昨年、提案。マグロの蓄養(幼魚を取り、いけすで育てる養殖)が盛んな漁業国(スペイン、イタリア、フランス、ギリシャ、マルタ、キプロス)が反対していたが、イタリアが1月末、フランスが2月初めに禁止支持陣営にくら替えし、流れが決まった。EU議長国スペインは合意をまとめなければならず、ギリシャは財政危機で支援を仰ぐ身。マグロ漁が盛んなマルタは反対を貫いたが、「多勢に無勢」だった。

 「イタリアの漁業者は少ない漁獲枠内で取り続けるより、漁をやめる代わりに補助金をもらう方を選んだ」。グリーンピース担当者が解説する。フランスでは、サルコジ大統領ら閣内主流の保護派が、禁輸に反対するルメール漁業相を押し切った。

 ただ、来年5月1日まで事実上の猶予期間を置き、来年3~6月の漁期のうち前半は「駆け込み漁獲」できるようにしたほか、禁輸の影響を受ける漁業関係者への補償でも合意。環境派が漁業国の条件をおおむねのむ代わりに、禁輸支持で足並みをそろえるという「実」を取った形になった。

 ◇在庫半年分 「品薄や急騰ない」

 クロマグロは「本マグロ」とも呼ばれ、ミナミマグロと並ぶ高級種。市場ではメバチやキハダなどの2、3倍の値が付く。日本での供給量はマグロ類全体(08年で41万トン)の約1割で、その半分が地中海産だ。つまり、モナコ案が通れば日本のクロマグロ供給は半減する。

 しかし、水産庁は「直ちに品薄になったり、価格が急騰することはない」とみている。08年9月のリーマン・ショック以降、高級マグロ(ミナミマグロを含む)の販売不振が続き、昨年末時点の冷凍在庫は半年分の供給量に当たる計2万737トンもあるからだ。東京・築地市場での冷凍クロマグロの取引価格も、今年1月の平均で1キロ当たり2857円と、08年8月の4171円より3割安い。

 ただ、天然物より割安で、トロの部分も多い蓄養マグロは飲食店や小売店に重宝されてきた。

 高級なすし店や料亭のものだったクロマグロがスーパーや回転ずしにも登場し、バブル末期に1キロ5000円を超えていた卸売価格が2000円台に下がったのも蓄養が一因だ。

 禁輸になればクロマグロは「非日常」の高級食材に戻りそうだが、関東地方の中堅スーパーの担当者は「既に漁獲規制の強化などで入荷量は最大時の3分の1ぐらいに減り、不況で売れ行きも鈍っている」と指摘。「禁輸は心配だが、結果はどうあれ今後は資源を守りながら大事に食べていくしかない」と話している。

 ◇中間国説得へ、日本全力 漁獲制限強化でも流れ変わらず

 地中海でクロマグロの蓄養が普及したのは90年代半ばから。成魚だけを取る日本漁船のはえ縄漁と違い、蓄養では産卵前の若い魚を一網打尽にする巻き網漁法を使うため、クロマグロは急速に減少。蓄養マグロの大半は日本に輸入されていることから、環境保護団体などは日本をマグロ減少の元凶とみなした。

 大西洋マグロ類保存国際委員会(ICCAT)でも漁獲量抑制は議論されてきた。しかし、蓄養業者を抱える欧州や北アフリカの地中海沿岸諸国が大幅な削減に抵抗。09年までは専門家の勧告を無視した過大な漁獲量が設定され、それすら守られなかったため、世界自然保護基金などの環境保護団体は「ICCATにはマグロを守れない。資源回復のため貿易をやめるべきだ」と批判した。

 国際世論がクロマグロ取引禁止へ一気に傾くことに危機感を強めた日本は、昨年11月のICCAT年次総会で漁獲削減論議を主導。10年の漁獲枠を科学委員会勧告の1万5000トンより少ない前年比4割減の1万3500トンとし、違法操業を防ぐ漁獲証明制度の強化などでも合意した。

 しかし、環境保護派の主張は既に欧州で浸透していた。「CITES締約国会議でも、欧州の反対で禁輸は否決される」と読んでいた日本は、その欧州に足をすくわれた。

 日本は引き続き「大西洋クロマグロは絶滅寸前ではない」と主張し、中間派の加盟国をぎりぎりまで説得し続ける構えだが「否決できても数票差」(赤松広隆農相)という土俵際に追いつめられている。

毎日新聞 2010年3月12日 東京朝刊

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