もっとも悪性度が高い脳腫瘍(しゅよう)「膠芽腫(こうがしゅ)」の増殖を抑える方法を、東京大のチームが見つけた。がんのもとになる幹細胞を無力化させ、動物実験で効果を実証した。臨床応用できれば、生存率の大幅な向上が期待できるという。6日、米科学誌「セル・ステムセル」電子版に掲載される。
膠芽腫は脳腫瘍の約1割を占める。放射線や抗がん剤でたたいてもやがて再発し、患者の7割が診断から2年以内に亡くなるという。東京大医学系研究科博士課程4年の生島弘彬さんと東京大病院の藤堂具紀特任教授は、再発の理由は脳腫瘍のもとになる「がん幹細胞」が生き残るためだと考え、脳腫瘍患者から見つかった細胞増殖因子「TGFベータ」に着目した。その働きを抑える阻害剤を膠芽腫患者のがん幹細胞に作用させたところ、増殖が抑えられた。
健康な7匹のマウスの脳にがん幹細胞を注射すると、すべてが膠芽腫を発症し30~45日で死んだ。一方、TGFベータ阻害剤を作用させたがん幹細胞を注射した7匹は、90日過ぎても無症状だった。
TGFベータには幹細胞を維持する機能があり、その働きを阻害することでがん幹細胞が無力化されるらしい。
ドイツの企業が脳腫瘍患者の脳にTGFベータ阻害剤を直接注入する臨床試験を実施中で、生島さんらは今回そのメカニズムを解明した。チームの宮園浩平教授(分子病理学)は「がん幹細胞を阻害剤で無力化させ、残ったがん細胞を放射線や抗がん剤でたたくという組み合わせで、膠芽腫の治療が可能になるかもしれない。他のがんにも有効か今後調べたい」と話す。【元村有希子】
毎日新聞 2009年11月6日 東京朝刊