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挑戦のとき/7 米ワシントン大准教授・鳥居啓子さん

 ◇「植物の仕組みに魅力」--鳥居啓子さん(43)

 植物は呼吸や光合成の際、表皮にある小さな穴(気孔)を開閉し酸素や二酸化炭素、水蒸気を出し入れする。数億年前、植物が海中から陸上に進出した際に獲得した巧みな機能だ。だが、植物の生存に不可欠な気孔が形成される仕組みは、最近まで謎だった。

 アブラナ科のシロイヌナズナを使い、その仕組みを解明したのが鳥居さんたちだ。さまざまな突然変異体から、その特徴を引き出す遺伝子を特定する手法で研究を続けた。05年、気孔の形成を左右する3種類の遺伝子を突き止め、米科学誌サイエンスに発表した。

 これら3種類の遺伝子をすべて欠くシロイヌナズナは、気孔の数が大幅に増えた。鳥居さんは「顕微鏡を見ていた研究員が興奮して知らせに来た。のぞいてみたら、気孔だらけでびっくりした」と当時を振り返る。

 さらに07年には、三つの遺伝子が順番に作用することで、未分化な表皮細胞から気孔が作り出されることを示した。表皮の細胞は放っておくと気孔になろうとする性質があり、3種類の遺伝子はそれを食い止める働きをしていた。「パズルを解くようなシンプルさが魅力」と語る通り、植物の基本的な仕組みを解明した業績として注目されている。

 幼いころから虫や図鑑が好きだった。小学校に上がるころ、母親から「何か買ってあげる」と言われ、顕微鏡を希望した。その顕微鏡で水たまりの水などを見るのに夢中になった。小麦粉の中にダニを見つけたりして驚いていたという。

 「学園都市」の響きにあこがれ、筑波大へ。「植物の遺伝子組み換え技術が実用化され、新しい時代が始まるという活気に満ちていた。植物の多様性がどうしてできるのか不思議だった」

 博士号取得の翌年、「とりあえず半年」という受け入れ先との約束で渡米して以来、米国生活は15年になる。今の大学で知り合ったドイツ人理論物理学者の夫との間に、5歳と2歳になる子どもがいる。乳飲み子を連れて教授会や講義をこなしたこともある。第2子を出産した日に、英科学誌ネイチャーに論文が掲載されたのもよい思い出だ。

 「科学者になりたいというより、好きなことを続けていたらここまで来た」と鳥居さん。「元は一つの受精卵から出発した細胞同士がどのようなコミュニケーションを取り、さまざまな役割の器官に分化していくかを解明したい」【西川拓】=隔週で掲載

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 ■人物略歴

 ◇とりい・けいこ

 東京都出身。93年、筑波大大学院博士課程修了。東京大、米エール大、ミシガン大で任期付き研究員を経験し、99年にワシントン大助教授。05年から現職。08年度の日本学術振興会賞を受賞。

毎日新聞 2009年3月31日 東京朝刊

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