52分に及んだ鳩山由紀夫首相の10月26日の所信表明演説を「演出」したのは劇作家の平田オリザさん(46)だった。当日早朝から公務の合間を縫い計2時間にわたって特訓。間を取ったり、強調したい言葉の前に空白をつくるなど、直前まで演劇の手法を直接伝授したという。
平田さんは官邸の情報発信などについて助言する内閣官房参与で、10月15日の就任後、演説指導が初仕事となった。スピーチは松井孝治官房副長官が首相の考えを聞き取った原案を基に、平田さんら専門チームが添削を繰り返して完成させた。
演説では「国民」を47回使い、「政治を改革するのだから新しいボキャブラリーが必要」と「市民」「NPO」を多用した。「政策を連ねるだけでなく、自身の経験を入れてみては」とも助言。息子が職に就けず自殺した「青森のおばあさん」と遊説で会った実体験も盛り込んだ。
首相に最初に話したのは、スピーチで名高いオバマ米大統領のまねをしないこと。「“俳優”の個性を生かし、知的で実直な鳩山総理らしさを尊重した」と内幕を話す。演説になじまないかに思える「私が尊敬するアインシュタイン博士」のくだりも、平田さんからみれば首相のイメージに合っていたという。
平田さんは「すさまじいヤジだけが誤算だったが、朗々と読み上げた鳩山総理は本番に強い。音程が安定しており、今後もっと磨ける」と評価する。【鈴木梢】
毎日新聞 2009年11月2日 20時47分