メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

日本の岐路 社会保障をどうする 負担増から目を背けるな

 日本の社会保障は先進国の中で最も危機的な状況にある。これだけ急激な高齢化と人口減少が同時に進むのはかつてないことだ。

     安倍晋三首相は衆院解散にあたって少子高齢化を「国難と呼ぶべき事態」と述べた。しかし、この問題は10年以上前から繰り返し議論されてきたことであり、降って湧いたように言うのはおかしい。

     医療や介護費用の多くは75歳以上に費やされている。2025年には最も人口の多い団塊世代が75歳を過ぎる。あと数年後に介護費用は現在の2倍に膨れ上がる。

     一方、支える側の現役世代は急速に減っている。50年後の人口は8808万人、現役世代は4割も減る。25年には介護職員だけで37万人以上が不足すると予想されている。

     医療や介護が破綻するのではないかという不安が国民の間に広がるのは当然だ。それが消費を手控え貯蓄に回す心理を生み、経済全体にも悪影響をもたらしている。

    場当たり的な安倍政権

     目の前の高齢化に対処しつつ、同時に少子化対策を進め、将来の不安を払拭(ふっしょく)しなければならない。難しいかじ取りを政府は迫られている。

     消費増税は社会保障を持続可能にするためなのに、安倍政権は2度も延期した。今度は消費税の使途を変更し幼児教育の無償化などに充てるという。高齢者に偏った社会保障を「全世代型」に変えるというのだ。

     子育て世代を支援し、出生率を上げて将来を支える世代の地盤沈下を防ぐことは必要だ。ただ、その前に立ちはだかる高齢化の急坂を乗り越える政策も示さないといけない。

     幼児教育無償化の財源を、消費増税による借金の穴埋め分に求めるというのは、形を変えた教育国債の発行にほかならない。将来世代に借金を回すことになる。

     希望の党は消費増税の凍結を主張している。負担を嫌う大衆心理に迎合して負担増を避け続けてきた政治に逆戻りするのでなく、しっかりと現実の危機を見据えた政策を打ち出すべきだ。

     「女性が活躍できる社会」「希望出生率1・8」「待機児童ゼロ」などのスローガンを安倍政権は次々に掲げてはきた。しかし、場当たり的でピント外れのものが多かったことも否定できない。

     「17年度末までに保育所の待機児童ゼロを実現する」と宣言したものの、待機児童数は3年連続で増加している。公約の3年先送りを表明せざるを得なくなった。自治体によって待機児童の定義が異なり、正確なニーズを把握しないまま甘い見通しを立てたためである。

     女性の活躍を推進するために打ち出した「3年間抱っこし放題」という育児休暇延長案も、働く女性が3年も休んだら職場復帰したくてもできなくなる現実を知らず、女性の神経を逆なでしたとの批判を浴びて引っ込めることになった。

    確かなデータの蓄積を

     当事者の置かれている状況やその心情を理解し、確かなデータと長期的な視野に立った構想力がなければ、どんな社会保障制度も破綻する。

     消費増税に関する「3党合意」が成立したのは民主党政権のときだが、福田康夫政権時の「社会保障国民会議」で年金・医療・介護について多岐にわたるデータを分析し、何通りもの将来的な見通しを出したことが議論の土台となった。

     「全世代型」を構想するためには、保育需要の予測や育児休業補償のニーズと効果など詳細なデータの分析と多角的な議論が必要だ。

     ただ、出生率が改善しても、生まれた子が社会を支える側になるのは20年以上先だ。その前に到来する「25年問題」に対処するための労働力と財源の確保は喫緊の課題であることを重ねて指摘したい。

     先細りしていく現役世代だけでなく、経済的に余裕のある高齢者にも応分の負担をしてもらわなければ社会がもたない。消費税はもちろん、相続税や年金への課税などあらゆる方策を検討し、負担についても「全世代型」にする必要がある。

     負担増の不人気政策は選挙のたびに各党から敬遠されてきた。ようやく成立した消費増税の「3党合意」も、すっかり忘れられようとしている。それが現在の危機を招いた原因であることを各党は自覚すべきだ。

     安心できる医療や介護を守るためには厳しい政策も必要だ。どの党が誠実に向き合っているのか、有権者は見極めるべきである。

    関連記事

    3極の議席は

    313
    自公
    61
    希維
    69
    共立社

    注目ニュース

    [PR]