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社説

安倍首相の記者会見 謙虚をどう形にするかだ

 衆院選の結果を踏まえ、安倍晋三首相が自民党総裁としてきのう記者会見した。

     首相は自らこう語った。「国民からより一層厳しいまなざしが注がれる。そのことをすべての与党議員が強く意識しなければならない。今まで以上に謙虚な姿勢で、そして真摯(しんし)な政権運営に全力を尽くさなければならない」

     自民党の大勝におごらず、国民目線で政治を進める、という意思表明なら、ぜひそうあってほしい。

     しかし、そう言いつつ、首をかしげざるを得ない発言があった。

     一つは、学校法人「加計(かけ)学園」をめぐる国家戦略特区での獣医学部新設の問題だ。

     十分に説明し国民から理解を得られたと受け止めるか、との質問に首相は「国会審議をすべてご覧になった方にはかなりご理解いただけたものと思っている」と答えた。

    意図的なすり替えでは

     説明責任は果たし、この問題はもう終わったといわんばかりだ。

     とくに首相は7月の閉会中審査に参考人として出席した加戸守行・前愛媛県知事の発言を強調している。

     加戸氏は「『加計ありき』と言うが、12年前から声をかけてくれたのは加計学園だけだ」と話した。

     愛媛県がけん引し、「ゆがめられた行政がただされた」という加戸氏の発言を、首相としては自身の関与を否定する事例としたいのだろう。

     しかし、この問題の核心は、学園の理事長が首相の友人であり、首相や側近が指示したり、官僚がそんたくしたりして、特区の選定の公平性がゆがめられたかどうかだ。

     加戸氏は7年前に知事を退任し、今回の選定に直接関与していない。その事情を知りつつ、加戸氏の発言が潔白の証明だと主張する首相は意図的に論点をすり替えていると言われても仕方がないのではないか。

     もう一つは、憲法改正である。

     首相は選挙中、自ら改憲への支持を訴える場面はほとんどなかった。これについて「街頭(演説)では地域の生活に密着した政策を述べるものだ」と首相は説明した。

     しかし、自民党が衆院選の主要公約に憲法改正を据え、その最初に掲げた自衛隊の憲法9条明記は首相自身が5月に提起したものだ。

     首相は「憲法(改正)を決めるのは国会ではなく、国民投票だ」と会見で答えた。

     確かに改憲を認めるかどうかは国民投票だが、首相は、衆院選では具体的な議論をしなくても問題ないと考えているようだ。

     改憲案の発議は国会しかできない。その国会を目指す候補者が選挙でそれぞれ憲法観を示すことは投票の重要な指標ではないか。

     自民党総裁である首相が改憲への見解表明を避け続けるなら、国民の理解を深めたいという自身の態度とは正反対と言わざるを得ない。

    党の実力を示す比例票

     首相は、自民党の衆院選3連勝はほぼ半世紀ぶりで、「同じ総裁の下で3回続けて勝利を得たのは立党以来60年あまりの歴史の中で初めてのことだ」と胸を張った。

     来年秋に控える党総裁選への強い自信の表明だといえよう。

     しかし、首相はそれほどの信任を得たのだろうか。

     比例代表の全国の政党別得票数を見比べると、自民党の約1852万票に対し、立憲民主党が約1107万票、希望の党が約966万票で、この主要野党2党を合計すると自民党をしのぐことがわかる。

     小選挙区の「勝因」が、立憲と希望の野党分裂選挙になった事情が大きいことは疑いようがない。与党との三つどもえになった選挙区での野党の勝率は約2割にとどまる。

     比例代表では野党を下回り、小選挙区で「漁夫の利」を得たというのが、実態である。

     共同通信の出口調査では、首相を「信頼していない」は51%で、「信頼している」の44%を上回った。

     首相の言う「謙虚」や「真摯」とはどういう意味なのか。

     臨時国会の召集については外交日程を列挙して明言せず、加計問題も「質問いただければ丁寧に答える」と受け身に徹する。

     改憲をめぐる他党との合意形成には「努力」するが、「政治であるからみなさますべてにご理解をいただけるわけではない」とかわした。

     首相に必要なのは、「謙虚」や「真摯」を口で言うだけでなく、具体的な形にすることだ。

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