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社説を読み解く

衆院選と第4次安倍内閣 「与党の勝利」か「野党の自滅」か=論説委員長・古賀攻

再び首相に指名され、あいさつする安倍晋三氏(中央)=衆院本会議で1日、、藤井達也撮影

毎日・恵まれた政治資源生かせ/朝日・首相への白紙委任ではない

 降ってわいたような衆院解散・総選挙が終わった。結果は与党の現状維持、野党の細分化で、有意な変化はほとんどなかった。

     それでも後から振り返った時、2017年衆院選は戦後政治の大きな分岐点と位置づけられる可能性がある。安倍晋三首相にとって今回の選挙は、政権担当期間を大幅に延ばすための手段であり、追加の期間は憲法など「国のかたち」の変更に直結するためだ。

           ◇

     毎日新聞の社説はこの認識に基づき、今衆院選を「日本の岐路」と題して論じてきた。

     安倍首相の都合優先が目に付く解散だったため、首相自身も多少の議席減は覚悟していたと言われる。また小池百合子東京都知事が希望の党設立を表明した当初は、もしやと思わせもした。

     しかし、自民党は公示前と同水準の284議席を獲得。公明党は6減だったが、今回から定数が10減ったため、与党では衆院の3分の2を超す313議席を得た。

     首相がゲームに勝ったのは明らかだ。野党の失敗で相対的に自民党が浮上したのは確かだが、事実として首相の勝利を認定しなければ選挙の意味がぼやけてしまう。開票を受けた10月23日社説で毎日は「首相にはそれだけのエネルギーが補充された」と評した。

     これに対し、朝日新聞は民進党代表だった前原誠司氏と小池氏の「政略優先の姿勢」が有権者に不信感を抱かせた結果、「今回の選挙は、むしろ野党が『負けた』のが実態だろう」と指摘した。コインの裏側にこだわる見方だ。

     日経新聞も野党に厳しい社説を掲載した。「この選挙をひとことで総括すれば『野党の自滅』である」「(与党が)『安倍政権への全面承認』と受け止めているとしたら、大いなる勘違いである」

     一方、普段から安倍政権を後押ししている産経新聞は「(国難を乗り越えるという)首相の呼びかけに、国民は強い支持を与えた」と手放しで首相の勝利であることを強調した。

     朝日と産経の間には、同じ選挙結果に対する論評とは思えないほどに認識の開きがある。

     読売新聞は「安倍政権のすべてを支持するほどではない。だが、政治の安定を維持し、(中略)きちんと結果を出してほしい。それが、今回示された民意だろう」と中間的な見解を示した。

     選挙の評価にとどまらず、安倍政権への注文も新聞によって力点の置き方が異なった。

     毎日は「恵まれた政治資源を国民のためにこそ活用すべきだ」と指摘したうえで、政権の最優先課題を「少子高齢化と財政危機の下で社会保障制度を持続可能にしてゆくこと」に求めた。強い政権でなければ、給付と負担のバランスを取ることが困難だからだ。

     産経が第一に提起したのは北朝鮮への圧力強化だ。「敵基地攻撃能力の導入や防衛予算の増額への政治決断」を求めたのに加えて、憲法に自衛隊の存在を明記することが「抑止力の向上に資する」という独特な論理を展開した。

     日経は経済再生こそが「政治の役割」と強調しつつ、「『初の憲法改正』という宿願ばかり追い求め、肝心の原点を置き去りにしてはならない」とくぎを刺した。

     読売は「丁寧かつ謙虚な政権運営」を、朝日は「民主主義における選挙は、勝者への白紙委任を意味しない」として独善的な姿勢を戒めるよう求めた。

           ◇

     総選挙に伴い安倍首相は11月1日に4度目の首相指名を受け、第4次安倍内閣を発足させた。

     これに先立つ10月23日の記者会見で首相は「同じ総裁の下で3回続けて勝利を得たのは立党以来60年あまりの歴史で初めて」と並々ならぬ自信を語った。来秋の党総裁選への布石だろう。3選されれば「10年政権」が射程に入る。

     それほどの長期政権とは不釣り合いなほど、4次内閣発足を受けた各紙の論調は辛口が目立った。首相が国会での質疑を避け、特別国会の召集日当日まで会期が未定の異常事態だったためだ。

     毎日は、内閣が行政権の行使に際して国会に連帯責任を負うと定めた憲法66条を改めて引き、「(首相は)自らに投票した与党の了承だけで行政権を行使できると考えていないか」とただした。

     日経は、外交日程がたて込んでいることを理由に「政権と国民をつなぐ場である国会を軽視してよいことにはならない」と批判。産経も「安定的な政権運営とは、国会論戦を避けることではない」と首相の姿勢に疑問を投げかけた。

     一方、民進党の分裂を軸に「多弱化」が一層進んだ野党側は「選後処理」の渦中にある。

     解散前の民進党勢力は、立憲民主党、希望の党、無所属、参院主体の民進党と4分割されている。毎日は10月25日社説で「まずは会派単位での連携が望ましい」と指摘したのに続き、11月1日社説でも「選挙が終われば元のさやに収まるというのでは有権者をないがしろにする」と訴えた。

     再結集への否定的な見方は各紙とも共通している。読売は10月26日社説で「衆院選直後の再結集は、集票目当てで一時的に看板を掛け替えたに等しい。有権者を愚弄(ぐろう)するものだ」。日経も11月1日社説で「もはや選挙互助会の発想で離合集散を繰り返す行動とは決別すべきだ」と厳しく注文した。

     橋爪大三郎・東京工大名誉教授は「選挙に負けることを恐れて、真実から目を背けてはならない」と野党の覚醒を求めた(10月28日毎日「安倍続投を読む」)。野党の再建に王道はなさそうだ。


    衆院選を受けた社説の見出し

     <安倍自民大勝の選挙結果>=いずれも10月23日

    毎日 おごらず、国民のために

    朝日 多様な民意に目を向けよ

    読売 信任踏まえて政策課題進めよ

    日経 安倍政権を全面承認したのではない

    産経 国難克服への強い支持だ

     <第4次安倍内閣の発足>=いずれも11月2日

    毎日 「国会に連帯責任」自覚を

    朝日 謙虚というなら行動で

    読売 少子化対策の実効性が肝心だ

    日経 「丁寧な国会運営」会期だけでなく中身も

    産経 緊張感保ち国難にあたれ

     <多弱化が進んだ野党について>

    毎日 「元のさや」には戻れない(11月1日)

    朝日 まず臨時国会を求めよ(10月24日)

    読売 安易な離合集散を繰り返すな(10月26日)

    日経 野党は政策の旗を鍛え直せ(11月1日)

    産経 民進回帰では不毛すぎる(10月28日)


     「社説を読み解く」は、前月の社説の主なテーマを取り上げ、他紙とも比較しながらより深く解説します。ご意見、ご感想をお寄せください。〒100-8051毎日新聞「オピニオン」係 opinion@mainichi.co.jp

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