冬カンリポート

優勝は日大・横山ゼミ「カマタリ」

 秋カンファレンス(秋カン)から1カ月半。紅葉が舞い散る11月27日、法政大市ケ谷キャンパス(東京都千代田区)で冬カンファレンス(冬カン)が開かれた。26大学31ゼミの中から、「チャックが主役となる商品」の日本大・横山斉理ゼミがプラン優勝に輝いた。これに協賛した協和チャック工業(大阪市)は初参加で、プラン優勝を出す快挙となった。準優勝は「介護福祉に役立つマグネット商品」の南山大・川北真紀子ゼミ、3位は「もらってウレシい段ボール小物」の青山学院大・小野譲司ゼミ。

試作品はミリ単位で調整 日大・横山ゼミ「カマタリ」

 日大・横山ゼミ「カマタリ」が企画した商品「RAIN BOUU」は、傘カバーだ。傘の柄の部分にかぶせ、チャックを開けばカバーになる。折りたたんでチャックを締めると傘の柄の部分に収まり、カバーを別に持ち運ばなくていいように工夫されている。

 このアイデアは、秋カン直前の約1週間前に固まったという。それまでは各自がアイデアを出しても、「テーマに沿っていない」「既存商品がある」などの理由で消えていた。苦しんだ中での企画は、秋カン前日の予行演習で、ゼミ仲間から高評価を得た。カマタリのメンバーは、それが後押しになったと振り返る。

 さまざまな長さの傘に対応するため、ミリ単位で作り直しを繰り返し、「裁縫の腕があがった」ほどだった。実際に商品化された場合は、障害者の就労施設で縫製してもらうことを想定しており、販売は輸入生活雑貨大手の「プラザ」と交渉済みだ。

 表彰式の講評で、流通科学大学の清水信年教授は「『介護福祉に役立つマグネット商品』は秋カンから高度な争いだった」とし、こうした中で1位を獲得したカマタリに敬意を表した。チームワークはばっちりとカマタリの3人。秋カンと冬カンを制したいま、目指すは総合優勝だ。

企業担当者との交渉が自信に 南山大・川北ゼミ「まぐねちゃん」

 片方の手に障害がある人が、一人でカップ容疑のふたを開けられるように--。南山大学・川北ゼミ「まぐねちゃん」の「くるりっぷ」は、この思いのもとに生まれた。小ぶりのトングのような形状で、「くるりっぷ」でふたの端をはさみ、くるくるとめくるように回すと開封できる。先端の内側にマグネットがついているので、はさんで回す際に、「くるりっぷ」の上下がずれることはなく、冷蔵庫などに付けておくことができる。

 偶然にも、カップめんのふたを割り箸にまきつけるようにして開けたことからひらめいたそうだ。秋カンでは木の素材だったが、冬カンでは、軽さや気軽に洗えることを考慮し、プラスチックに変更して臨んだ。

 カップめんのほか、ヨーグルトやゼリーなど7種類の容器で実験した。7種類といってもメーカーごとに大きさや形状が少しずつ異なるため、「試した数は数えられないほど」という。講評で清水教授は「完成度が高い。問題解決に導き、使ってもらって実証している」と評価した。

 ゼミ内のくじ引きで決まったという「まぐねちゃん」の3人。不安のスタートだったものの、今では仲間や企業担当者とのやりとりでコミュニケーション力がついたと感じている。「Sカレは自信につながった」「一生懸命やれば道は開ける」「自分のダメな部分を知ることもできた」。一つのテーマを通して、得たものは多い。

雑誌とのコラボにぴったり 青山学院大・小野ゼミ「C-himney」

 優勝、準優勝のチームがともに秋カンでも1位だったのに対して、青山学院大・小野ゼミ「C-himney(チムニー)」は、冬カンで初めて1位を獲得し、プラン3位に。メンバーは、他大学のプレゼンテーションを聞いて、「どこもよい内容だったので、不安があった」と語る一方で、「よい刺激になった」と振り返った。

 「一生懸命やったものは必ず伝わる」と取り組み、企画したのは卵ケース「GP」だ。屋外レジャーの際、割れることが心配で持ち運びが敬遠されがちな卵を、無事に手軽に運べるケースを企画した。段ボール小物ノベルティーというテーマのもと、軽い、水に強いなど段ボールの特徴と、低価格、A4サイズなどノベルティーとしての役割を考慮すると、一番相性の良いのがアウトドア業界だった。清水教授も講評で「段ボールの特性を生かし、雑誌とのコラボにはぴったりの商品」とし、狙いは当たった。

 震動、圧力、落下などの検証を重ね、使った卵は100個弱にもなり、「たくさん食べました」とチムニーのメンバーは話す。商品化が実現すれば、アウトドア雑誌「ガルヴィ」のノベルティーとして採用される予定だ。「冬カンの結果をまず『ガルヴィ』編集部に連絡して、次のステップに進みたい」。同じゼミ仲間からの祝福に包まれながら、チムニーのメンバーは、商品化に向けて気持ちを新たにしていた。

商品化見据えた動き加速 社会人経験積むチャンスにも

 近年、Sカレの一つの傾向として、商品化を見据えた動きが加速している。企画の段階から、販売を委託したい企業にPRし、話をほぼまとめているチームが少なくない。優勝した日大の「カマタリ」は、プラザの問い合わせフォームから新商品の提案を行い、実際に商品を見てもらうことができ、高い評価を得たという。3位の青学「C-himney」は雑誌の「ガルヴィ」と、中村学園大・明神実枝ゼミ「ブックチャック」は福岡のジュンク堂書店福岡店とそれぞれ商品化実現後の話を詰めていた。

 企業に企画をPRするには、早い段階から商品の完成度が求められ、結果として、各チームのレベルがあがっている。また、協賛企業の担当者だけでなく、さまざまな企業関係者と交渉することで、学生の段階から社会人経験を積むことができるのも利点だ。「最初は社会人と話すことに緊張したが、ビジネスの予行演習ができた」(中村大・明神チーム)、「メールの送り方も教授などに見てもらい、学習した」(南山大・川北チーム)と話す。

 発表を終えたチームの中には、「ベストを尽くしたと思っていたが、講評を聞いて『もうちょっと工夫できたかも』と思った」と話す学生もいた。「やりきった」「悔しい」。さまざまな思いが交錯した冬カンが終わった。冬カン学生委員長の清野大樹さん(法政大)は、セレモニーのあいさつで、「集った450人の、参加の形や思いは、それぞれ異なると思う」としたうえで、「一つのことを成し遂げた経験は必ず糧になる」と、自身の経験もふまえて学生に語りかけた。

 そして、「隣に座っている友人は、これからの人生でかけがえのない特別な存在になるはず。ともに必死に取り組んだ友人を誇りに思い、大切にしてほしい」と呼びかけ、Sカレをしめくくった。

◇受賞チーム及びテーマ1位は次のとおり

「プラン優勝」
日本大・横山斉理ゼミ(チャックが主役となる商品)

「プラン準優勝」
南山大・川北真紀子ゼミ(介護福祉に役立つマグネット商品)

「プラン3位」
青山学院大・小野譲司ゼミ(もらってウレシい段ボール小物)

「日本マーケティング学会賞」
関西学院大・石淵順也ゼミ(キットパスで 「楽がき文化」の創造)

「毎日新聞社賞」
専修大・奥瀬喜之ゼミ(枡技術商品)

「学生賞」
日本大・横山斉理ゼミ(チャックが主役となる商品)

◇プラン・テーマ1位

「就職情報サイト『マイナビ』のキラーコンテンツ」
大阪市立大・小林哲ゼミ

「キットパスで『楽がき文化』の創造」
関西学院大・石淵順也ゼミ

「枡技術商品」
専修大・奥瀬喜之ゼミ

「もらってウレシい段ボール小物」
青山学院大・小野譲司ゼミ

「アスレジャー」
南山大・川北真紀子ゼミ

「DHCフィットビューティー・バッグ」
南山大・川北真紀子ゼミ

「大学生が思わず使うスマホアプリ」
兵庫県立大・秋山秀一ゼミ

「チャックが主役となる商品」
日本大・横山斉理ゼミ

「介護福祉に役立つマグネット商品」
南山大・川北真紀子ゼミ