協力企業担当者の眼

Sカレに参加した時から就活 経験を自分のものに

 経団連は9月12日、2018年春入社の学生の選考解禁を、今年と同じ「4年生の6月」にすると正式発表した。エントリーシートの提出から面接までわずか3カ月。自己分析や業界研究、面接対策……学生のやるべき事柄は多い、こうした中で「スチューデント・イノベーション・カレッジ(Sカレ)」の経験をどう就活に生かせばよいのだろうか。最近の就活事情も含め、マイナビ編集部の宮地一樹部長と、法政大学の西川英彦教授に聞いた。【江刺弘子】

カギは経験の“棚卸し” マイナビ編集部・宮地一樹部長

ここ数年の就職活動に対する新たな動きはありますか?

 まだ一部ですが、学生の成績を企業側が見ることができるシステムを導入した学校と企業があります。特に理系の学生は、専門的な勉強をしっかりしているか見られています。

 これが採用にどれぐらい影響するかは、まだ未知数ですが、これからちょっとずつ変わってくるのではないでしょうか。

学生は業界研究に熱心です。

 業界の知識を持っていないと、自分がその業界や業種にあっているかどうかわからず、入社後のミスマッチにつながります。

 しばしば「この業界に入りたい」と、一つの業界だけを研究する学生がいます。社会にはいろいろな業界があり、調べていくと、発見があったり、意外にも自分にあった業種がみつかります。そのため、複数の業界を研究することが重要です。

そういった意味でインターンシップはよい経験になりますね。

 そうなんです。まず、働くという具体的な意識が芽生え、いろいろな会社を知ろうというきっかけにもなります。

 マイナビの調査では、インターンシップ経験者と未経験者の11社以上受験した割合が、経験者は64.4%で未経験者は41.6%となり、大きな開きがありました。企業に対する視野が広がったことを裏付けていると捉えています。

 またインターンシップを1社経験した学生の内々定率は66.9%だったのに対して、5社は84.5%、6社以上は86.4%という結果になり、参加回数の多い学生ほど、内々定獲得率が高まる傾向にあります。

Sカレの経験は、就活にどう生きてきますか?

 Sカレでは、どのような背景があって、ニーズは何で……と順序だてて考えていき、企画につなげていきます。これが身についていれば、就活でも、やるべきことを道筋だてて進めることができるのではないでしょうか。

 また文系には珍しい、専門的なマーケティング技術も入社後は即戦力になり得るもので、就活にも役立つはずです。

Sカレに参加することで、就活も有利になりそうですね。

 単にSカレに参加していただけでは、何も伝わりません。Sカレの経験を、いかに自分の言葉で伝えられるかが重要です。求められるのは自分の中で“棚卸し”ができているかどうかです。

 Sカレのポイントは、PDCA(Plan/Do/Check/ Act)サイクルをまわしていけるか▽原価計算などのマーケット視点▽チーム内での自分の役割を自覚する−−の三つです。これらの経験の裏付けができ、いかに自分の言葉で伝えられるかが、カギです。

 Sカレに限らず、就活で成功するタイプは、「学生時代を語れる人」だと思います。アルバイトや部活が充実していたら、それを自分の言葉で語ることができる。単に「がんばりました」では、何も伝わりません。

Sカレで得たものが、就活の結果につながらない時もあります。

 企業は「入社後何を具体的にやっていきたいのか」を将来像をもとに、そのイメージにあう人を選びます。企業との相性や縁もありますね。

 大学までの判断基準は偏差値でした。しかし就活に偏差値はありません。ここで初めてつまずく学生もいます。内定がもらえないと、自身を全否定されたように感じる学生も少なくありません。そうではなく、その学生はその会社にあった人材ではなかっただけで、前向きに自分にあった会社を探していきましょう。

最近のSカレの学生の傾向は?

 プレゼンが上手になってきています。Sカレに参加する学生は、自分から手をあげる人が多いので、意識が高いですね。

 Sカレは社会人生活の疑似体験です。ある意味で、Sカレに向かうところから就活なのです。Sカレという貴重な体験をしているということをしっかり認識することが、就活や社会に出てからも必ず生きてくるはずです。

競争と共創でスキルアップ 法政大学・西川英彦教授

Sカレも11年目に入りました。

 世の中にビジネスプランコンテストはたくさんあり、そのほとんどが企業側が学生のプランをほめて終わるというものです。それらと比べると商品化までめざすSカレは稀有(けう)な存在です。Sカレは最初から商品化にこだわってやってきています。

 実際の商品化とプラン優勝や企業賞などの賞の授与、この二つは最初から就活や、その先のマーケティング実務を意識してやってきました。

 各大学のゼミの先生方も同様の考え方だと思います。Sカレには理論と実践、学問と実学を体現できるインフラが整っていて、商品化できるうえに、賞ももらえ、就活や企業で生きる。こういったことが共通の認識でしょう。

ここ10年で学生の気質は変わりましたか?

 気質はあまり変わっていません。一方、環境は大きく変わりました。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)が盛んになってきて、他のチームの動きもみえるようになり、企業の指導も増えてきました。

 Sカレの重要なキーワードは、競争(Competition)と共創(Co−creation)の二つです。競争はSNSが盛んになり、他のチームを意識せざるえなくなる状況になりました。共創は、SNSを通して企業と連絡しやすくなった。そういう意味で学生は、より能動的で積極的にならざるを得なくなりました。

Sカレに参加する学生は、そもそも自主性に優れているように見えます。

 Sカレは、文系のインカレです。学生は、他大学に勝ちたいという思いが強い。秋カン(大会)で1位だったチームは、それを維持したいと思うし、よくなかったチームは挽回したいと思い、実際に冬カンでの逆転劇も多い。こういったことが、自主性や積極性につながっています。

 Sカレを通じて伸びる学生も少なくありません。私のゼミでは、それまで目立たなかった学生が、積極的になったケースが、たくさんあります。Sカレで活躍して、翌年のSカレの学生委員までやる学生も多いです。就職もマーケティングを希望し、いまも企業で活躍していると聞いています。

Sカレを通して、学生はいかに成長していくのでしょうか。

 Sカレは、アイデアだけでは商品化はできないので、市場調査や原価計算など実践的に学びながら進めていきます。それぞれのテーマで15チーム前後が競うのは、かなりヘビーで、実際の企業より困難かもしれません。

 そしてそれぞれのチームが、だいたいみんなけんかしながら、やっています。そこにマネージメントのむずかしさがでてくるわけです。評価されないというジレンマもあります。これらは限りなく社会に出たときに体験することに近い。担当教員が評価してくれても優勝するわけでなく、逆に裏目に出ることもあるわけで、理不尽さやくやしさを感じることもあります。「やっぱり、あっちのチームがいい」と企業の人の心変わりだってあります。悔しさ、達成感、喜び……短期間でさまざまなことが凝縮されていて、そういうこと経験し、乗り越えれないチームは残ってきていません。

 SカレのOBやOGが集まると、学生生活の中でSカレが一番おもしろかったと話しています。経験が生きているんですね。商品開発やマーケティングに目覚めた学生も多くいます。

Sカレは就活に有利ですか

 実学のマーケティングや、心をつかむプレゼンの手法などは大いに役立つはずです。学生が実践しているデプスインタビューや、観察法、リード・ユーザー法などの探索的調査は先端的な手法で、企業によってはやっていないところもあります。またSNSの活用も同様です。こうしたことは、入社後に力を発揮するでしょう。

 かつて、何社受けても内定をもらえなかった学生が、開き直って、面接で「2分ください」とSカレでのプレゼンをその場で再現したところ、一発で受かりました。その学生はプレゼン力を自分のものにし、面接官もそれを評価したのではないでしょうか。

Sカレに参加する学生に求める最大のことは?

 とにかく商品化を実現してほしいです。最初にも言いましたが、Sカレのスタートは商品化です。それが関わった企業にお返しできることでもあるのです。

 学生は悔いがないように、チームや企業、教員に遠慮せず、失敗してもいいので、力を出し尽くしてください。そう、高校野球みたいに。高校野球はチームワークです。Sカレもチーム内でぶつかりながらも、共創と競争を意識しながらやっていってください。

 商品化を目指して、成長につなげていってください。この経験は絶対に社会に出てから生きてきます。