嗜好と文化「私のポリシー」

2018年5月14日

Vol.86 浅暮三文自分のしたいことは地べたを這うようにやれ

 鼻が曲がるような強烈なにおいを発するチーズや、胃の腑(ふ)がキュッと収縮するような刺激的な味の臓物の煮込み……。そうした食物を口にすることによって主人公の脳の奥に眠った記憶の窓が開く、といった内容の小説「ポルトガルの四月」を読んでいるとき、街のレストランで頼んだシチュー料理がテーブルに出てきた。さて、この本が絶好のスパイスになったか、はたまた絶品料理を台無しにしたか。その答えを小説の著者本人にお伝えしようと思いながら、いざお会いしたら、忘れてしまった。目の前の作家、浅暮三文さん(59)の関西弁による、2時間に及ぶ、山あり谷ありの青春一代記が面白くて、ついついその世界に引き込まれてしまったからだ。

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「嗜好と文化」企画は、毎日新聞2012年創刊140年記念事業として、JTと日本推理作家協会協力のもと毎月1回掲載します。

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