悪役こそ精彩あり

オーラを見逃さない

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 逢坂剛さんの仕事場は、日本一の古書街・神田神保町のマンションの一室。ほとんど毎日、ここにやってきて原稿を書き、近所の飲食店で昼食を食べ、書店をめぐる。そしてまた原稿に向かう。このインタビューは、まだ逢坂さんが一日の活動を始めてまもない午前中に始まった。

 学生時代から、ずっと、神保町かいわいを根城にしてるんですね。

 「ええ、家と学校に行っている時間を除いては、だいたい神保町にいたかな。本を読んで大人になっていったと言ってもいいくらい。あと、ぼくの場合は映画ですね。大学は神保町の向こう方の駿河台だし、就職した会社は神保町と言ってもおかしくない場所に本社があったしね。

 作家として独立して、最初の仕事場はすずらん通りを見下ろすビルの一室でした。ここが2番目だけど、100メートルも離れていないですね。私くらい、このかいわいを長い間うろうろし続けている人間はいないんじゃないかな。うん」

 書店をめぐるのが好きなのですね。作家仲間でも特別ですか。

 「そうですね。浅田次郎さんとかには神保町でよく会ったけど、ぼくがやっぱり一番かなあ。だいたい、11時半ごろからお昼を食べてね、その後、1時間かそこら、ひと回りするんですよ。古本屋で棚ぞろえに変化がないかどうかを確かめたり、東京堂書店で最新刊の棚をながめたりしてね。

 古本屋は毎日行かないと気づかないけど、新しい本が入ったりすると、棚の並びが微妙に変わったりするんです。行かないと、それがわかんなくなっちまうから。そうやって通っていると、『おお』という掘り出しものに出合うんですよ。スペイン現代史の関係で、探していた本とかね。そういう時は『一種のオーラが出ていたんだよ』って、古書好きの人は、みんな言いますね。そんなオーラを見逃さないためにね、書店めぐりは欠かせないんですよ」

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