作り込んでだます

こちらの仕掛けた「罠」にはまってくれるかどうか、それが大きな楽しみ

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 皇居のまぶしい新緑を望むビル上層階のティールームに麻耶さんは現れた。「隻眼の少女」で第64回の日本推理作家協会賞を受賞したばかりだ。「異質」と指摘されることもある作品の書き手は、ひょうひょうとした空気を漂わせている人だった。

 推理作家協会賞の受賞後、変わったことはありますか?受賞直後には自宅に帰って、ふとんの中で実感がわくかもしれないと話しておられました。

 「いやあ、変わったことは特にありませんね。先日、地元紙からインタビューされ、今こうして取材を受けていますね。そういう形で実感するものはありますが。確かにうれしいし、賞の名に恥じないようにしなくてはいけないとは思いますが、基本的には今まで通りにやっていくだけです」

 麻耶さんの作品は小さな伏線をちりばめ、さまざまな仕掛けを用意した精緻な作りが特徴だと言われます。ご自身も意識されていることですか?

 「そうですね、読者をいかにだますかに没頭しています。書いていてひとつの作品が終盤にさしかかると、思わずニヤニヤしてしまうんですよ。自分でも不思議なんですが、これで驚いてくれるかなあ、きっと驚くだろうなあ、と思って、つい顔がにやけてしまいます。うまくだませるかどうか、こちらの仕掛けた『わな』にはまってくれるかどうか、それが大きな楽しみなんです」

 「京都大学の推理小説研究会では仲間の作品を読んで、犯人はこいつだという『犯人当て』をやってきました。書き手は、簡単にわからないようにいろいろな罠を仕掛けておく。その楽しみを今でも引きずっているんでしょうね。うまくだませるかどうかは、書くうえでのモチベーションになっていますね」

 読者をだますことがモチベーションですか。

 「最後の最後にはわかってしまうにしても、そこまでに何割くらいまでなら、読者に見破られても仕方ないかということを、ミステリーを書く人はみんな考えているはずですよ。ぼくは9割をだましたいと、いつも思っていますが」

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