癖のあるのが好き

「忙しくても手書きの手紙。にじみ出るものがあるから」

1/3ページ
 

 道尾秀介さんに会うため、東京・秋葉原から「つくばエクスプレス」に乗った。待ち合わせ場所は、ある駅前のバー&ダイニング。駅のそばなのに隠れ家のような雰囲気の店だ。常連の道尾さんは、まるで仕事帰りにちょっと寄ってみたよ、という感じで現れた。

 直木賞を受賞されて何か変わったことはありますか?

 「喫茶店や飲み屋で声をかけられることが多くなりましたね。気楽に話しかけてもらえるのはありがたいし、うれしいですけど」

 お気に入りのものや、手放せないものってありますか。

 「手書きの手紙を出すのが好きです。仕事のやりとりは電子メールや電話ばかりですが、手書きの手紙をよく書きますよ。縦書きの便箋を使って。知人や恩師から手紙が届いたら、やっぱり返信は手紙ですね」

 「この2、3年愛用しているのは『呉竹』の万年筆ペンの硬筆です。大きな字を書くときは毛筆だけど、便箋には硬筆。めりはりのある字が好きなので、ボールペンはほとんど使いません。中軟字の万年筆でブルーブラックのインクという時期もありましたが、便箋が残り少なくなってくると、感触がカリカリしてくる。それがイヤになって、今は呉竹に落ち着きました」

 手紙を書くのが好きとは意外です。

 「忙しくても手書きの手紙はいいですね。もらえば、紙や筆の選び方や字面から、書いている人がどんな気持ちなのかよくわかるし、僕の手紙もそんなふうに受け止められているかもしれない。にじみ出るものがあるから好きなんです」

戻る
  • JT
  • 日本推理作家協会