「『家族』は特別なテーマではない」

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 何か、コレクションのようなものはありますか?

 「目的もなくモノを集めたことはないですね。子どものころから、何かをコレクションしたという記憶はありません。筆記具は好きで、引き出しの中に20本くらいのペンがゴロゴロしていますが、それもお気に入りを探してとっかえひっかえしているうちに、そうなっただけで」

 「その中でもとくに大事にしているものもあって、たとえば『光媒の花』で山本周五郎賞をいただいた時に、小林亜星さんからお祝いにいただいたモンブランの万年筆。あれは大切です」

 ギターはたくさん持っておられるそうですね。

 「10代のころにバンドをやっていたので。ネックが折れてしまったのとか、アンプ内蔵のやつとか、アコースティックにクラシック、12弦ギター、ギタレレ…。今も仕事のあいまによく弾きますよ。昔やっていたヘビーメタルをやろうとしても、もう右手が動きませんけど。当時は『メタリカ』というバンドが好きで、ほとんどの曲を弾けました」

 「2008年に出版した『ラットマン』にはロックバンドが登場しますが、ここでは『メタリカ』ではなく『エアロスミス』です。好きなものは、なるべく作品に出さないようにしているんです。好きなものを出すと、どうしても書きすぎてしまって、冗長になって、小説としてのクオリティーが下がってしまうので。もう少し、そのへんのサジ加減がうまくなったら、自分の好きなバンドや何かも取り上げて書いてみたいですね」

 道尾さんの作品は、常に「家族」をテーマにしているのではないか、という見方もあります。

 「確かにそういう話を聞きました。まったく意識していないことだったので、驚きました。じゃあ、逆に家族をテーマにしてみようと思って、意図的に書いたのが『カラスの親指』(第62回日本推理作家協会賞受賞作)だったんです。書き終わって、どうだったかというと、いつもと満足感はまったく同じだった。そのことで逆に、道尾秀介の中で『家族』は特別なテーマではないということがわかりましたね」

 「ジャンル読み、というのがありますけど、僕はもったいない読み方をしているなあ、と思います。時に僕の作品は『ミステリーとしてはナントカカントカ』といった文句を言われたりするけれど、その批判にいったい何の意味があるんだろうと思います。僕も出版社も『これはミステリーです』なんて、ひと言も言ってないのに。ひとつのジャンルに押し込んで、その中で論じる目的はいったい何なんでしょうね。書評家なら、それも仕事のうちに入るのでしょうけど」

  • JT
  • 日本推理作家協会