「チェスや将棋、人間同士だから面白い」

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 ところで、貴志さんの趣味というと、何でしょうか?

 「大学時代、チェスのサークルに所属していました。千変万化のバリエーションがあって、そこには必ずドラマがあるんですね。今もNHKの将棋対局にくぎ付けになることがあります。よく見ていると、お互いが思い描いているものと違う局面、狙っていることとは違う方向にずれていって、思いもよらない盤面模様で勝負がつくことがあります。どちらもまるで悪夢を見たというような顔をしているんですね」

 「人間同士だから面白いんです。その点、パソコン相手はまったく面白くありませんよ。強くなりましたからね。一歩一歩、ジワジワやられていくだけです。創造性のかけらもなく、手を封じられて何もできずに負けてしまう。人間とやるのと違って味気ないし、勝負のあやもありません」

 音楽は聴きますか?

 「音がないと書けない人なので、音楽にはずいぶん助けてもらっています。その時その時でいろいろなジャンルを聴きますが、プログレッシブロックが特に好きです。『ダークゾーン』の戦闘シーンを書くときなんて、プログレを流して、ペンがどんどん進みましたね。NHK・FMの『今日は一日プログレ三昧、再び』という番組でも、コメントしてきたところなんですが、イギリスのバンド『ジェネシス』が大好きです。ピンク・フロイドやキング・クリムゾンよりもジェネシスです」

 「プログレッシブロックはもともとジャンルがはっきりしない分野でしたが、やがてポンプロックが生まれ、『ポンプ』は『華麗な』という意味ですが、最近ではプログレメタルとか、プログレフォークメタルといろんなジャンルを融合していってますね。演奏技術も段違いに進歩していますよ。プログレメタルの人気バンド『ドリームシアター』にはジュリアード音楽院を出ているメンバーもいます」

 物や道具で大事にしている、長年使っているものはありますか。

 「蓄音機に凝っていて、10年くらい前に米国ビクター製を手に入れました。針は鉄製、アンプはないのでボリュームもありません。しかし、余計な増幅はしていないので、一切のゆがみがありません。そして、その音の生々しさ。SPレコードのプツプツという雑音は入るけど、あの生々しさは何なのだろう、とびっくりします。力強くて大きいんですよ。とても夜には鳴らせません」

 「音はもちろんモノラルですが、モノラルだからといって決して劣るわけではないんです。モノラルからステレオへの変化なんて、結局売らんかなの技術革新じゃないかと思ってしまいます。鍋だって、米はおいしく炊けるもんですよ」

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