「『好きじゃないもの』だから書けることもある」

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 ゴルフも好きですね。

「趣味のうちでは一番若くて、まだ5年くらいです。ゴルフは誘われる回数がすごく多い、フライフィッシングはまずありませんね。だって誰もやらないんだもん。ゴルフはやって初めて、みんなに浸透しているのがわかった。ゴルフは面白い。数字に出るのが面白いですね」

「ハンディが増え始めていて、去年の夏前に14だったのが、今は20くらい、19、点いくつです。これは絶対に直木賞のせいですよ、あれさえなければ、今ごろもうちょっと行っていたと思うな」

 そしてカメラですか? きょうは愛用のデジカメを持って来ていただいたそうで。

「これはオリンパスペンのE―P3です。ズームは好きじゃないので17ミリのレンズをつけてますが。あとリコーのデジタルカメラGRも。メーンのカメラはコンタックスなんですが、ごつくてどこでも持っていけるというわけじゃないので、オリンパスペンを愛用してますね」

 どんな題材を撮っているのですか? 人物ですか?

「いや、街中で見かける看板とかを撮っていることが多いですね。あと撮るものがないと、机の上とかを撮っています。ほら、こんな感じで。このカメラ、なかなか不思議な質感があるでしょ」

「飲みに行く時とかに持っていって、友だちを撮るんですけど、これが芸術的すぎて誰が誰かさっぱりわからなかったり。真っ暗な中で顔の一部と手しか写ってなくて、僕はわかっているんですけどね。何か暗示的な意味を持たせようなんてことはないんです。わざともったいぶってみせているだけですよ」

 新作の「ルーズヴェルト・ゲーム」は社会人野球がテーマですね。

「名門チームが会社の業績不振とともに落ちぶれるんだけど、新しく就任した監督がチームを立て直す。一方で会社も再生していくというストーリーです。実在の社会人野球チームを取材しました。野球を知らない人にも楽しめると思います」

 野球はよく観戦に出かけるのですか?

「いや、僕、あんまり野球好きじゃないんですよ。だから書けるというか。野球が好きだと、野球のことを書きすぎるでしょう。僕は野球、そんなに見ないし、のめり込んでませんね」

〈次回は4月2日(月)・石田衣良氏掲載予定〉

 

池井戸 潤(いけいど・じゅん)
1963年岐阜県生まれ。慶応大卒。98年「果つる底なき」で第44回江戸川乱歩賞、2010年「鉄の骨」で第31回吉川英治文学新人賞、11年「下町ロケット」で第145回直木賞を受賞。そのほか「空飛ぶタイヤ」「オレたちバブル入行組」「オレたち花のバブル組」「シャイロックの子供たち」「BT'63」「最終退行」「不祥事」「銀行総務特命」「民王」「かばん屋の相続」など著作多数。最新刊は「ルーズヴェルト・ゲーム」

取材を終えて  毎日新聞社 編集編成局次長 中村秀明
ポンポンと歯切れのいい発言が飛び出し、心地よいインタビューだった。直木賞受賞で大きく変化した生活リズムを笑いをまじえてうらめしそうに嘆き、「下町ロケット」について「本当はボツにしたかったんです」と語った。
作品へのこだわりは「読者が泣いて笑ってスカッとできるような小説であること」だという。サインをお願いすると、まったくのアドリブだったという決めゼリフ「一階に現実、二階に夢」もきちんと書き添えてくれた。サービス精神いっぱい、こまやかな気遣いの人なのだと感じた。

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