海の中では時間を忘れる

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 スキューバダイビングですか?

「スキューバは器具が重そうで。船などで沖まで行って、そこから飛び込むというのも大げさ。じゃあ、シュノーケリングかというと、これがまた結構重いんです。ゴーグルとシュノーケルと足ひれで、何度かやったんですが、邪魔なんです。足ひれはクロールではいいけど、平泳ぎには向かないとかね。結局は息をとめて潜って、海中を見られればいいのですから」

 というと、ただの素潜りですか。

「スイムゴーグルだけは使います。ただし普通のだと、色がついていてきれいじゃないんです。それでスポーツジムで見つけた無色透明のものをつけ、水着の上にユニクロで買ってきたハイネックのTシャツを着て、潜っています。それが一番です」

「4、5メートルの深さまで潜れば、結構いろいろなものが見られますよ。潜るのはサイパンが一番多いでしょうか。奄美や、与論とかは海がとてもきれいなんですが、旅行代金が高くて。それにどうせなら日本語の通じない所に行きたい」

 サイパンでは日がな一日潜っているんですか?

「飛行機で深夜に着いたら、ホテルにチェックインして、仮眠した後に潜っているという感じです。日差しが強くなると昼寝して、また夕方から泳いで、水中散歩しています。魚やサンゴを見て。よくよく見ると、ナマコもいろいろな種類があって楽しいですよ」

「時間がたつのを忘れますね。夫と一緒に行くと、いつまでも海に入ったまま戻ってこないから、すごく心配させてしまいます。入ったら最後、長い時間、海にいますから。時にはストーカーのように魚を追いかけています。そう、魚にかまれたこともあるんですよ」

 かまれたのですか。

「ええ、やられましたよ、モンガラカワハギに。きれいな宝石みたいな可愛い魚なんですが。潮が引いていて胸くらいまでの水深しかなくて、ちょっとボーッとしてたら体ごと突進してきて、かかとをかまれました。ちょっと血が出てましたね。縄張りを荒らされたと思ったんでしょうね。『よくもやったな、この野郎!』という思いでしたね」

 チェロも弾かれるそうですね。

「大学のオーケストラに入って、空いているパートがチェロとビオラくらいで、そこから始めましたが、小さいころにきちんとした音楽教育を受けていないので、なかなか上達しません。相変わらず合奏をしてもついていけないんですけど、楽しくなってきたのは、やっとここ5、6年でしょうか」

「音楽というのは、かなりしんどいですね。小説や絵は大人から始めてもある程度は上達するけど、音楽は向き不向きに加え、幼少期からの経験で違ってきます。そういう意味で残酷です。小説家でデビューした時、グラビア写真でチェロを弾いている姿でイメージが作られてしまったので、やめるにやめられなくなっちゃったというわけなんですよ」

 話は変わりますが、発酵に凝っているそうですね。

「今の季節なら安く大量に出回っているイチゴをつぶして、ちょっと砂糖と酵母菌を加えて、ジャムを作るんですよ。イチゴが一番作りやすくて、夏場になると、ほかにもいろいろ。ものによっては酵母菌が働かず、発酵しないこともあって、失敗もまた楽しいですね。市販のヨーグルトと牛乳で、自家製のヨーグルトも作りますよ」

「発酵させるのが本当に好きなんです。あんな楽しいことはない。シュワシュワと菌が呼吸していて、生きているのがわかって、生き物を飼っているような感覚ですね。ほんとに楽しくて、そしておいしい」

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