映像の世界から小説の世界へ

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 2年間のアメリカ暮らしの後、1991年に帰国。それからは日本のテレビドラマの脚本を多く書いていますね。

「日本テレビの『火サス』など2時間ミステリーやテレビ朝日の深夜ドラマなど、何本か書きました。ジャンルで言うと、推理物、ミステリーが多かったですね。ところが、元々ミステリーという小説の形式は、論理の世界なんですね。映画やドラマなど映像は、もう少し感情に訴えかけるもので、純然たる論理は苦手なんです。映画にしにくい。それに比べて、ハラハラドキドキのサスペンスは映像に合っていて、映画は得意なんです。脚本家時代は、そんなことを自分なりに研究していました」

 でも、日本推理作家協会賞の第1回受賞者の横溝正史さんの推理小説は、たくさん映像化されていますね。

「はい。普通、小説と映画は別物で、どちらもいいものは少ないのですが、市川崑監督が作った『犬神家の一族』、『悪魔の手毬唄』などの金田一耕助シリーズは、神技みたいに素晴らしいコラボレーションです。何度も繰り返し見た作品です」

 ドラマの脚本家から、いよいよ2001年に小説家に。デビュー作の小説「13階段」が、いきなり第47回江戸川乱歩賞を受賞しました。どんなお気持ちでしたか。

「今回の日本推理作家協会賞のときとは、かなり違う感じですね。乱歩賞の時は、受賞の一報を境に、世界が丸ごと変わってしまうという驚きがありました。脚本家から小説家へ、慣れ親しんだ映像業界から未知の出版業界へという、人生が180度変わってしまうような衝撃です」

 小説を書こうという強いきっかけはあったんですか。

「脚本家時代に読んだ宮部みゆきさんの『火車』『魔術はささやく』、この2点に強く惹かれたのが大きかったです。本当にすごい作品というのは、こちらの創作意欲まで高めてくれるんですね。特に『魔術はささやく』には、それまで読んだことがないようなストーリー展開があって、ずいぶん研究させていただきました。その影響を受けて書いたのが、私の『13階段』です。宮部作品がなかったら書けなかった、と思っています。人生を変えた一冊と言っても過言ではないですね」

 そして今回の長編「ジェノサイド」が日本推理作家協会賞、山田風太郎賞などを受賞するという快挙。どんなお気持ちですか。

「やはり受賞はどれもうれしく、感慨深いですね」

 この作品は壮大な構想ですが、ストーリーの核心部分はいつごろ、どんなところから得られたのですか。

「かなり前、私が20歳のころに読んだ立花隆さんの本『文明の逆説 危機の時代の人間研究』に、ある生物進化の可能性が書かれていて、それがヒントになりました。その後、関連する資料などを興味のおもむくままに読んだりして、徐々に準備を進めていきました。準備期間が長かった分、映像資料などはかなりため込むことができましたね」

  • JT
  • 日本推理作家協会