アナログを手放さない

津軽三味線に魅せられて

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 偶然の出会いを、自分の人生が激変する「必然の出会い」と感じる時がある。秦建日子さんは、そんな出会いをいくつか経験してきた。20代のサラリーマン時代、飛び込み営業で入った劇団事務所での、つかこうへいさん本人との予期せぬ出会いから、演劇、戯曲、テレビドラマ脚本、小説の世界へと一直線で突き進んできた。そして今、若者を集めてクリエイター集団も主宰する。多彩で多忙な活動の日々、癒やしの時間はなんと、津軽三味線を弾くひとときだという。それもまた、偶然の出会いからだった。

 作家の趣味としては、楽器、しかも津軽三味線とは意外ですね。以前からお好きだったんですか。

 「これも偶然です。次の舞台のことを考えながら、夕ご飯を食べていたお店で、たまたま三味線の音楽がずっと流れていました。これは舞台の場面にハマりそうだと思い、お店の人に聞いたら、Soothe(スーズ)というインディーズのCDだと。その津軽三味線を演奏しているのが小山豊さんでした。お会いして、『らん』という芝居に出演をお願いして、狭い舞台でしたが、ピアノ、サックス、津軽三味線のトリオで演奏していただきました。とても好評で、1年後再演となったくらいです。小山さんのバンドも素晴らしく、私がライブをプロデュースもしました」

 聴いて楽しむのと、自分で演奏するのとは違いますよね。三味線はそれまでに弾いた経験はあったのですか。

 「ありません。高校時代にはギター部にいましたけど。でも小山さんの演奏がカッコよくて、自分でも弾いてみたくなり、小山さんを師匠に習い始めて、満2年です」

 津軽三味線のどこにほれたのですか。

 「もともと僕は音楽好き、とくにジャズが好きでした。ジャズCDを精力的に買い集めた時期もあります。そこで、津軽三味線でジャズが弾けたらいいなあと。日本人の私が、日本の民族楽器の津軽三味線でジャムセッションできたら、一番しっくりくる組み合わせになると思ったんです」

 ギターを弾けるなら、同じ弦楽器、三味線も容易に弾けたのでは。

 「それが、むしろ逆で、ギターを弾く時のクセがハンディになる。月1度、師匠の小山さんに1対1で習っているんですが、いやあ、進歩の遅いことにぼうぜんとしますね。ヨチヨチ歩きで、こんなにもうまくいかないものかと。この2年は絶望との戦いでしたね」

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