物語を作る方が好き

酒とシネマの日々

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 少年少女の心は純粋なのか、はたまた残酷さを秘めているのか。私たちが少年犯罪に出合うとき、罪を犯した後の加害者の心はどう変わるのか、被害者の家族はどんな思いで生き続けるのか、なかなか想像できない。その世界に分け入って、事件に絡んだ加害者、被害者の双方の人物群の心のひだを細やかに描いた作品「天使のナイフ」で第51回江戸川乱歩賞を受賞した薬丸岳さん。さらに、犯罪の奥の奥に隠された少年時代の秘密が二転三転のドラマを呼ぶ最新作「逃亡」で、ミステリーの深さと人間の悲しさを同時に味わわせてくれた。作品が生み出された仕事場を訪ねた。

 仕事部屋には毎日ご出勤ですか。

 「はい。自宅から午前9時にここに来て、夕方までいます。デビューしたころは朝まで執筆していましたが、今は夜型はしんどいですから。それに僕はお酒が好きで、夕方になると、ここから地元に帰って、なじみのバーに飲みに行くので」

 よく行くんですか。

 「ほぼ毎日飲みに行きます。チェーン店の居酒屋ではなく、カウンターがあって、バーテンダーのいるショットバーですね。地元に何軒か、なじみのバーがあるので、そこで9時か10時まで飲んでいます。仕事の後ですので、頭の中がいっぱいいっぱい。だから、店に行ってすぐには人と話せない。ハイテンションをゆっくり静めて、少しずつリラックスしていきます。そうして飲み仲間と会うと、楽しく飲んで話します。時には朝方までという日もあります。なじみの店が何軒かあるので、時にはハシゴをして楽しんでいます。妻と一緒に飲みに行くこともよくあります。妻とは地元のバーでお客同士で出会ったんです」

 だいぶお飲みになるんですか。

 「まず小ジョッキ1杯の生ビールから始まって、次はラム。色の濃いダークラムにライムを半分搾って、ソーダで割るラム・リッキーですね。その次はバーボンをロックで飲みます。銘柄はブラントン、ノブクリークなど好きな2、3種類をキープしています。僕はいろいろな酒を冒険しない方で、一つ気に入ったものがあれば、それしか飲まないタイプです。スコッチのシングルモルトよりもバーボン派です。まあ、一晩で6、7杯くらい。時々10杯行くときもありますが」 

 酔っぱらったら、普段とどう変わりますか。

 「基本的には、普段とあまり変わりませんねえ。あまり酔いませんし、記憶がなくなったことはありません。たまに調子に乗って飲みすぎて気分が悪くなることはありますが、これぐらい飲んだらそうなるだろうとわかるんです」

 それだけ飲んでいると、1カ月の酒代も相当になるのでは?

 「酒エンゲル係数はすごいでしょうね。うちで家計簿をつけていますが、恐ろしくてトータルは出せません。まあ、これも必要経費ということで。それに、時々は自宅で妻と鍋を囲んで飲むこともありますから。鍋物には日本酒が合いますね。僕が一番好きなのは日本酒ですよ。銘柄は妻に任せています。僕は飲んだら名前を忘れちゃう。でも、川越の地酒の『鏡山』はおいしいですね。4合瓶なら二人で1本は空けます」

 お酒はだいぶ前からお飲みに?

 「もの心ついたころから、ということにしておいてください」

 以前、バーテンダーのご経験があるとか。

 「20代前半の3年近くバーテンダーとして働いていました。時々、お客さんから何かカクテルを作ってくれと言われたら、作っていました。5年ほど前まで自宅でシェーカーを振って何か作っていましたが、最近はやりません。一時期、バーテンダーの仕事もいいなあと思ったことがありましたが、やはり物語を作る仕事がしたいと、結局やめました」

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