ゲーム、釣り、料理、ゴルフ、商店街めぐり…

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 得意な料理は何ですか。

 「とりあえず、ある材料で何でも作ります。朝市に行ったときに買った食材をしまっておいたり、釣りに行って釣れた魚を調理したり。まあ、田舎だからあまり外で食べる店も多くないから、必要に迫られて作るようになった。でも何十年も料理をしているから、料理の手回しを考えて、段取りはいいですよ。例えば、パスタを30人分作るときも何種類か作る。ボンゴレを初めに作るとスープでブヨブヨになってしまうから、初めにミートソースを出して、あとからボンゴレを出す、というように」

 本格的ですね。

 「毎年暮れは家族と年越しをしますが、僕が年越しラーメンを作ります。鶏がらスープとカツオだしとを2種類作っておいて、鶏6カツオ4で合わせたスープにするとラーメンに使い、鶏2カツオ8のスープはお雑煮に使う、というように」

 お雑煮といえば、自分の家と奥さんの実家とで味や風味が異なる場合が多いですよね。地方地方によって味が多様なのも日本食の特徴ですね。

 「僕は名古屋育ちですけど、うちのおふくろは江戸っ子。かみさんは東京生まれの東京育ちですけど、お義母さんは愛知県の生まれ。我が家のお雑煮はシンプルですけど、僕は葉っぱ類やニンジンなどいろいろ具を入れるのが好き。子どもにとっては、正月の味は父親の味です」

 ということは、大沢家では"おふくろの味"ではなくて、"オヤジの味"ですか。

 「いやいや、普段はもちろん、おふくろの味ですよ。カミさんに怒られます。ただ、別荘ではカミさんに何もしなくていいと言っています。そうしないとアンフェアですからね。娘も料理好きで、別荘で僕があれこれ作っている横で娘が見ていて、いちいち説明しなくても、段取りみたいなものは伝わるようですね。今も、会社に自分で作った弁当を持って行っています」

 それはいい話ですね。さて、もう一つの趣味のゴルフも、これまたかなりの年季が入っているそうですね。

 「24歳の時に始めてから32年間やっています。ゴルフは一生やるつもりです。でも、今は自分の衰えと向き合って、もがいている最中です。50歳から60歳にかけてが一番衰えを感じる年ごろですね。やはり40代前半と比べると、変なミスも出るし、ドライバーの飛距離も20〜30ヤード短くなっている。衰えとの向き合い方に2通りあります。一つは、組み立て方を変える。もう一つは、体を鍛えて飛距離を取り戻す。どちらかというと、今はこちらの方が強い。若い人と一緒にプレーしていて、ハンデをあげてはいるけど、負けたくない。ところが、若い連中はだんだんうまくなってくる。こちらも何とかせにゃという気持ちになってくるんですよ」

 その気持ち、わかりますが、あまりご無理をなさらないように。その60歳という還暦という節目を迎えるときのイメージはありますか。

 「ないですね。ああ、60歳かというくらいで。昔は55歳がサラリーマンの定年でしたね。死ぬまで注文があるのが幸せな作家人生だと言われます。僕だっていつ食えなくなるかわからない。先のことはわからないし、何とも言えない。絶対安全地帯なんてこの業界にはない。ただ、書けるうちは書くしかないと思っているだけです」

 肉体の健康については、何か留意されていることはありますか。

 「睡眠時間はたっぷり取るようにしています。2度寝、3度寝をしてでも、1日で最低7時間は寝るようにしています。ウオーキングもよくしますね。これは健康のためというより、歩くと気持ちいいから好きで歩いている。東京23区の商店街は全部行っていますよ。クルマで行って、一人で商店街を歩く。日ごろ都心のマンションにいたりすると、場違いなところに行きたくなるんです。商店街を歩きながら、コロッケやおでんをちょっとずつつまんでいると、ああ、人が地に足を着けて生きているなあ、とホッとするんです。心が和んでくる。若い時から続けています。きっと、ない物ねだりの心理なのでしょうね。いくら歩いてみても、ハードボイルド小説に商店街が出てくることはありませんけどね。」

 新刊「獣眼」(12年10月刊、徳間書店)は、人の未来の姿を予知できる「神眼」の持ち主をめぐる暗闘を描いた作品ですが、大沢さんはそのような特殊能力をお持ちなのですか。

 「ないですよ。あったら困るでしょう。ただ、エンターテインメントとして、そのような能力が人間社会にとってどうなのかという問い掛けをして、読者との距離を近づけてはいます」

 多くの読者が楽しみにしている「新宿鮫」シリーズ。第10作「絆回廊」(11年)から1年以上がたちました。主人公・鮫島の上司、新宿署の生活安全課長が射殺された後、どうなるのか。

 「あのまま読者を放り出しちゃいけないとは思っています。今年か来年か。でも一方、これで終わりかと思うときもある。決めていません。強いて言えば、決めていないというのが決め事。そのくらい柔らかな感じでいたいと思っています」

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  • 日本推理作家協会