4畳半の一室がフィギュアでいっぱい
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"卒業後"は、何に興味を持ったんですか。
「小学校5年のころは江戸川乱歩、シャーロック・ホームズといった推理小説にかぶれていました。ところが、中学校の後半になると、いきなり文芸路線に入ります。とくに突然、太宰治にハマりまして、太宰をまねて文章を書いたりし始めました。高校3年生の時、ある文芸賞に応募したら、佳作に選ばれて10万円の賞金をもらいました。小説家になろうと思ったのは、このころからです」
その後、大学生になってから小説をどんどん書き続けて…。
「いやそれが、大学時代はアルバイトばかりの生活で、書けませんでした。それに大学1年の時、ゴジラがまたブームになっていまして、再ハマリしたんです。フィギュア集めも再開して、オタクの道に出戻りですよ。よくゴジラ映画の特集をオールナイトでやる映画館に行って、夜9時から朝5時まで見ましたね。朝帰るときには、怪獣の鳴き声が耳にこびりついていましたよ。大の大人がこんなんでいいのか、20歳にもなってゴジラもないだろうよ、という声も響きましたけど、それでもいいよという人が周りにたくさんいて、抵抗もなくなりました」
今もフィギュア集めは続けているのですか。
「30歳代後半に小説家デビューしまして、40歳代半ばから少し自由に使えるお金が増えてきたので、好きなオモチャを見境なく買っちゃいます。今、自宅以外に仕事場を持っていますが、3部屋のうちの一つ、4畳半一室がフィギュア類で埋まっている状態です」
数にしたら、どのくらいありますか。
「キロで言った方が早いかな。まあ、女房が目を背けるくらいたくさん、と言ったらいいか。指先サイズの小さいものまで入れると、1000体近くあるかもしれません。でも、僕は整理するのが苦手なタイプで、時々掃除している時に出てきたヤツがあると、おお、ここにあったのか、と取り出してしばらく遊んだりしています。僕はおおらかと言うか、とりあえず持っていれば気が済むタイプなんですが、さらに、自分なりにフィギュアに手を入れるのも好き。仮面ライダーの額の触角を削り直したり全体の色を塗り直して、自分だけの仮面ライダーにする、といったことを楽しんでいます。あまりに完璧に出来上がっているものには興味がわかなくて、70%程度のものに自分で手を入れる、例えば、ロボットの目にLEDを入れて光らせる、みたいなことが好きなんです」
それだけたくさん持っていると、お店が開けるでしょう。
「よく聞かれますけど、売る気はないですよ。その時代を感じさせるものは持っておきたいですからね。ついでに言うと本もたくさんあるので、古本屋も開けるかも。ひところはビデオも山ほど持っていましたが、今はDVDになったので、助かっています」

趣味がいろいろあって、いいですね。
「まあ、本を読むとか、映画をたくさん見るというのは、半分は小説を書くための仕事の一部みたいなもの。今、団塊の世代が定年を迎えて、趣味といったらそば打ちと言う人が多いそうですが、趣味はやはり、自分の一番好きなことがいいですね。ゴジラが好きなら好きでいいじゃないですか。いい年をして、と言われても、自分の好きなことをやる。僕らの年でフィギュア好きな人、多いですよ。趣味って窓みたいなものだと思いますね。自分が知らない世界を見せてくれる窓。そこから元気が出てくる窓。知らないものを見たり聞いたりして、元気をもらう。いいじゃないですか」