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朝の3時間が僕のゴールデンタイムです

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 がんの最新治療法の一つに「ウイルス療法」がある。ある種のウイルスを体内に注入すると、健康な細胞には影響せず、がん細胞だけをやっつける。世界中で今、激烈な研究開発競争が進行中、というところまでは現実の話だが、研究がもう数歩進んでアンチエイジングに効果のあるウイルスが開発された、というのは未来の話。誰もが不老不死を享受できる時代になったら、日本は、世界は、人類はどうなる!という未来社会を生々しく描いた話題のSF長編小説「百年法」の作者に、のたうち回った執筆の日々を聞いた。

 コーヒーにこだわりをお持ちだとか。

 「朝の一杯のコーヒーを一口飲んだ瞬間、ホッと息がつける。その一瞬が欲しくて、コーヒーを飲んでいるようなところがあります。でも、そんなにマニアックにこだわっているということはありませんよ。若い時は苦いものが好きでしたが、最近になって酸味、苦み、まろやかさのバランスがとれているコーヒーを飲むと、すごく心地よく感じるようになりました。ストレスを和らげるために飲むので、とんがった味はかえって妙なストレスを感じてしまいますね」

 今はどんなコーヒーを?

 「いろいろ試してきましたが、5、6年前からキーコーヒーのトラジャブレンドを飲んでいます。豆を電動ミルでひいてからいれて飲みます。最初の一口を飲んだ瞬間、ホッと息がつけます」

 朝ごはんの時だけですか。

 「はい。朝食の準備は5時半から始めて、6時20分ごろから食べます」

 それを山田さんがおやりになっているんですか。

 「ええ、結婚以来、こんな感じでやっています。手の空いている方が作ることにしたら、必然的に朝に強い僕が担当になって」

 朝食といったら、どんなメニューですか。

 「毎朝決まったメニューです。オレンジジュース、野菜を煮込んだもの、焼いたパン、ナッツ、ヨーグルト、バナナにコーヒーです。これまでいろいろな食べ物を試してきて、メニューに加えたり、飽きたらメニューから外したりして、今のメニューにたどり着きました。基本的には毎日食べて飽きないものですね」

 体のことや栄養を考えて?

 「はい、考えています。以前はマーガリンをパンにたっぷりつけていましたが、今はやめました。バターも使いません。パンもライ麦入りのものを食べています。自分の体にとって心地よいと感じるかどうか、食べ続けられるかどうか、で決めています。でも、どんなに健康にいいものでも、我慢してまで食べることはしません。逆にストレスになりますからね」

 心地よい、とはどんな感じですか。

 「体に無理をかけないということです。最近メニューに加わったナッツで言うと、おいしいと感じるようになったのは、体が必要としているからだと思っています。体全体が調子よく回っている、その感覚が大切です」

 夕食もお作りになるんですか。

 「いや、夜は妻に任せきりです。昼は軽く、ご飯一杯にキムチ、納豆、青汁。もともと胃が強くないので、控えめにしています」

 早起きの生活ですと、小説の執筆はいつですか。

 「だいたい朝の8時から11時。せいぜいそんなものです。自宅で書くか、仕事場で書くか、ですね」

 午後は?

 「書くことはありますが、どうにも集中力が落ちます。よっぽど調子がよくないと進まないですね」

 そうすると、午前中の3時間だけ?

 「はい、短いです。怠けているわけではないのですが、それ以上は頭が働かないんです。書いても使い物にならない。会社員だった時に作家デビューして、それからしばらくしてから会社を辞めて専業作家になりましたが、このペースはずっと変わりません。朝の3時間が僕のゴールデンタイムです」

 昔の文士といわれた人たちは、酒を飲むわ遊びまくるわで、それでも徹夜でモノを書くなど、型破りな人がいたものですが。

 「僕が同じことをやったらすぐに身体を壊すでしょうね。人にはそれぞれ適したリズムがある。規則正しく、を毎日繰り返す。僕にとってはそれが一番長続きする方法なんだと思います。決まりきったパターンで変化のない生活の方が、小説の執筆に力を集中できますし」

 午後は何をなさっているんですか。

 「どうしても運動不足になりがちなので、体を動かすようにしています。たとえば、ウオーキング。今のところに移り住んでから11年になりますが、毎日同じコースを歩いても飽きませんね。田んぼが広がり、大きな川が流れ、人工水路、クリークも縦横に流れて、風に麦の穂がなびく田園風景は、見ているだけで心が和みます」 

 散歩の後は?

 「英会話の勉強をしています。といっても自分の部屋でパソコン相手にです。とくに目的はないんですが、気分転換にいいかなと。小説で使う頭は午前中に使い果たしているので、小説とはまったく関係ないところで頭を使ってみようと。それに、小説執筆は黙ってひたすらパソコンに向かって日本語を打ち込む作業なので、日本語ではない英語を、しかも声を出して発散できるものがいいと」

 上達すると、使いたくなるもの。海外旅行などの計画は?

 「まあ、気分転換程度でやっているので、あまり上達は……。海外旅行はしていないですね。ただ、いつかイタリア旅行はしてみたい。古代ローマの遺跡を訪ねたいという夢はあります」

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