「ゴジラと生きて20年」

1個完成させるのに2週間かかります

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 子どもの時の趣味が大人になった今も続いている、という人は結構いるものだ。男の子にとってプラモデルは一時期熱中する世界。大倉崇裕さんもその一人だった。そして40代後半の今も作り続けている。単に完成品を買い集めるコレクターではなく、自分で組み立てて作る楽しみに魅せられた。そんな少年時代からのプラモデル作りの習慣が、今の小説家生活のリズムに大きな影響を与えたという。ならば、30年を超える趣味について聞かずばなるまい。

 プラモデルがお好きと聞いておりますが、集めるのではなくて、作るのが好きだと。

 「そうです。作るのが好きです」

 男の子は熱中しますよね。大倉さんはいつごろからですか。

 「作り始めたのは、小学生のころでした。もともとおやじが好きで、お土産に戦艦のプラモデルを買って来てくれたのを作ったのが初めでした。父親は技術系の人間だったせいもあり、作るのが好き。鉄道模型なども作っていましたから」

 一緒に作ったりしたんですか。

 「作ってくれと言ったら、おやじは作ってくれましたね。小学校の低学年のころは共同制作でしたが、高学年になるともう私は自分一人で作っていました。あのころは一つのものを丹念に作るというより、いっぱい作ってずらりと並べてみたいという気持ちが強かった」

 1980年代というと、ガンダムブームがありました。

 「私が中学生の時ですね。『ホビージャパン』という雑誌がガンダムを取り上げてからブームになりました。子ども心に、ガンダムには打たれました。そのころはまだテレビは見ていなくて、私はまず模型からガンダムに入りました。当時1個300円でした。それまでは鉄道や飛行機の模型はありましたが、ロボットであそこまで人気が出たのは、ガンダムが初めてでしょう。鉄道模型の中にジオラマというのがあるでしょう。情景模型ですね。あれに憧れていて、ガンダムが山や川の中で戦っているジオラマを作りたかった。雑誌に作例が載っていましたから、余計作りたかったですね」

 時間を忘れて作る、そんな少年時代がありましたね。

 「キットを買ってきたら、まず初めは爪切りでパチパチ切り離しながら、接着剤でベタベタ付けると、当時は1時間ちょっとでできちゃう。今はパーツがもっと精巧になっていますから、組み立てたものに色を付けたり、陰影や汚れを付けたり、シールを貼ったりして、1個完成させるのに2週間かかります。凝り性です」

 小学生からずっと続けている? 今も?

 「お恥ずかしい話ですが、途切れることなく、なんだかんだと、会社勤めをしようが、引っ越しをしようが、30年以上やっています」

 プラモデルといっても、いろいろなものがありますよね。

 「はい。私はガンダムから始まっていろいろなロボットを作りました。貪欲に上級生からテクニックを教わりもしました。いろいろ寄り道をしましたが、結局、一番好きだとわかったのが怪獣でした。ガンプラの後はゴジラ、ガメラといった怪獣模型のジャンルへと行きました。かれこれ20年くらいになり今に至っています。一番長くなりました」

 ゴジラといえば、当時はもう有名なキャラクターになっていましたね。

 「映画からテレビドラマにも雑誌にも出ていました。でも、プラモデルではガンダムほどメジャーではなかった。ガンダムはバンダイが大量生産していましたが、ゴジラはガレージキットといって、ロットが10個から多くても50個くらいの世界なんです」

 ガレージキットというと?

 「昔、欧米で個人がガレージの中で日曜大工のようにコツコツと作っていたのが始まりです。自分の作りたい模型をまず紙粘土のようなもので原型を作り、シリコンを使って型を作る。そこにプラキャストを流し込んで一つ一つ複製していく。すべて手作業で、好きな人がいたら買いませんか、という世界です。1980年代は著作権もあまりうるさくなくて、当時は自由に売り買いできました」

 そのキットを買って組み立てたら完成、簡単ですね。

 「ところが、もともと手作りなものですから、個々のパーツがゆがんでいたりしてうまく合わない部分もあるんです。そこで組み立てる側の私たちがカッターで切ったりヤスリで削ったりパテで埋めたりして成形しながら、うまく組み立てる技術が必要になる。それに、買ったパーツの色は白をはじめいろいろな色があるので、自分なりに怪獣に合っていると思う色を付けるんです」

 なるほど。もとは同じパーツでも、組み立てる人によって一つ一つ違うゴジラが出来上がるわけですね。

 「そこに個々のセンスが出るんです。さらに言えば、原型師の方が作ったままが型取りされるので、人によってはものすごく精巧なゴジラが成形されます。ゴジラの爪や背びれやウロコが精巧にできていて、ちょっとアートに近いものがあります」

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