「わが友、馬と犬」

おいしいお酒を楽しんで飲むようになりました

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 「飲んだ方がリラックスして話せるから」と、桜満開のある日、ビールを飲みながらインタビューが始まった。作家、森詠さん(73)なじみの横浜・野毛の老舗料理屋の小部屋。子どものころからの動物好き人生を懐かしそうに、いとおしそうに語る。まず出だしは、お酒の話から。

 結構若いころから相当お飲みになっていたんでしょうね。

 「大学の寮にいたころ、そこはもう飲ん兵衛の巣だったから、先輩たちから相当飲まされましたねえ。一升瓶は飲んでいました。でも、それでどのくらい飲んだら吐くか、限界がわかったというか、これ以上飲むと意識が飛んでしまうということを体で覚えました」

 大学卒業後は、週刊誌や文芸紙の記者、編集者の仕事をおやりになっていましたが、その時もだいぶ飲んでいましたか。

 「当時は、作家先生とベロンベロンになるまで飲むこともありましたが、やはり仕事という意識があったのか、羽目を外すところまではいかなかったと思う。真面目な飲み方だったかな。まあ、自称ですけど」

 酔っ払っての失敗というのは?

 「酔っ払ってタクシーに乗って、自宅に帰ろうとしたとき、乗ってすぐ寝てしまい、着きましたよ、と運転手に言われて気がついたら、以前住んでいた家だった、ということがありました。引っ越しした前の住所を告げていたんですね」

 お年を召されてくると飲み方も変わりますか。

 「まあ、健康のために酒を飲むように。大量でなく、おいしい酒を楽しんで飲むようになりました。どんな酒も好きですが、もともと日本酒が好きで、女房の故郷の新潟から銘酒を取り寄せたりしていました。今はなるべく蒸留酒を飲むようにしています。ほろ酔い程度ですね。晩酌もやります。ああそう、アルコール抜きの日は、アルコール分ゼロのビールを飲んでいます。最近のフリーはおいしいですよ。へたすると、本物のビールよりうまいかもしれないくらい。実際に酔うんですよ。ほんのりと顔が赤くなってくる。カミさんは『私のせいよ』というけど、これは冗談。きっと脳内アルコールが作用したのだと思っています。というのも、僕が戦場によく行っていた時のこと、銃弾で負傷した人を見ていて分かったのは、ずっと痛みが激しいわけじゃなくて、脳内モルヒネが体内で分泌して痛みが減ってくるんです」

 戦場といえば、この2月に刊行された書き下ろしの近未来小説「イスラム大戦」(文芸社文庫)には驚きました。2021年の中東を舞台に、イスラム過激派組織「イスラム国」(IS)の人質になった日本人を日本の特殊部隊が救出する、という筋立てです。まさに出版されたタイミングに、日本人2人の殺害映像が流されるという現実の悲劇が重なりました。

 「僕もびっくりしました。あんなことが起こるとは思っていませんでした。そもそも1999年に『黙示録2010 ユーラシア大戦』という近未来ものを出していたので、今度は2021年の近未来を舞台にしたものをと、昨年の10月から11月にかけて書いたものです」

 2021年には日本は国連安全保障理事会の常任理事国になっていて、自衛隊も国連平和維持軍に派兵している、さらに特殊部隊が中東の紛争地で救出作戦を敢行する……という内容が、とてもリアルに描かれています。

 「今議論が進められている集団的自衛権の拡大が進むと、イスラム過激派組織との直接の戦闘ということにもなりかねない、という一種の警告の意味を込めて書いたのですが」

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