「寿司でぜいたくを!」

割と鼻が利くので、ハズレがあまりない。これは自慢です。

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 「赤毛のアン」など本を読むのが好きだった女の子は、小学校の卒業文集に「作家になる」と将来の夢を書いた。高校卒業後、20年ものOL生活を経て、40歳でその夢をかなえた。現在も、「家で本を読み、アニメを見るだけで幸せ」という完全インドア派宣言をする一方、食べることに興味全開。「カエルやヘビならいけると思う」とチャレンジ精神も旺盛なようだ。自称「行き当たりばったり人間」だからか、道産子の開拓者魂が騒ぐせいか。まずは食べ物談議から。

 江戸のワケあり菓子職人の話を書いた時代小説「まるまるのいが」(講談社)で第36回吉川英治文学新人賞受賞、おめでとうございます。おいしそうな和菓子が次々と出てくるので、さぞや筆者は甘党なのだろうと思っていたら、実は……。

 「そうなんです。選考会のときにもお話ししましたが、私、甘いものは全然ダメなんです。ケーキもダメ。クリームがダメなんです」

 それは最近のことですか、それとも、もっと以前から?

 「子どものころからです。甘いお菓子を食べたら気持ち悪くなって、だんだん食べられなくなって、もう体に合わなくなった感じです。以前一度買ってみたんですが、3分の1かじっただけでもうダメ。一個も食べられませんでした。甘いお菓子は全然歯が立ちません」

 そうすると、「西條殺すにゃ刃物はいらぬ。まんじゅう一つも食わせりゃいい」ってことになりますね。落語の「まんじゅうこわい」の逆の意味で、本当に怖いんですね。

 「はい、そうです」

 食べ物そのものには興味がないんですか。

 「いや、食べるという行為自体は好きです。甘いもの以外は何でも好きです」

 中でも、これが一番好き、という食べ物は何ですか。

 「う〜ん、お寿司すしですね。あと、辛いエスニック料理も好きです」

 寿司といえば、ピンからキリまでありますが。

 「値段が張りますから気合を入れて行きます。お寿司の時だけはぜいたくして、カウンターに座ってお好みで食べます。郷里の帯広から25歳で上京してから、東京の寿司はアジとマグロがさすがにおいしいと感じました」

 今では、女性が一人で焼き肉店や牛丼店に入って食べる光景が見られますが、回転寿司でない寿司屋に一人で入るのは勇気がいりそうですね。

 「一人で店に入るのに抵抗はありませんが、まだあまり行ったことはありません。一人で行くほど私はまだ洗練されていません。友達と一緒によく行きます」

 カウンターに座って、店のオヤジさんと雑談を交わしながら、食べる順番も決めているのですか。

 「まあ、話はしますけど、どっちかというと、一緒に行った友達と話す方が多いですね。それに通の客はまず酒とさかなで一杯やってから、という順でしょうが、私はいきなりお寿司をがっつり食べます。あんまり食べる順番は決めていなくて、そのときの気分次第です」

 あちこちの寿司屋で食べるんですか。

 「友達と一緒に旅行に行くことがありますが、旅先では必ずお寿司を食べます。去年行った福井市のY寿司は、過去最高というくらいおいしかった。店の外見が普通だったので、ちょっと不安でしたが、かつて味わったことがないほどでした。びっくりしました」

 私は知らない町を歩いていて、どこかおいしい店はないかなと探しながら、勘を働かせてパッと入るクチですが、西條さんは?

 「私も結構パッと行く方です。飛び込み派ですね。割と鼻が利くので、ハズレがあんまりない。これは自慢できます」

 どうやっていい店を見極めますか。コツを教えてください。

 「店の外観ですかね。たたずまい、というか、のれんの感じとか。適当に古く、さびれていて、清潔ではあるけど、あまり都会的センス過ぎないところ……。まあ、感じとしか言いようがありませんけど」

 西條さんにとってのうまい寿司というのは、どんな寿司ですか。

 「まず、シャリが甘すぎない。軟らかくなくて、硬めのシャリがいい。それにネタが新鮮だったら最高です。ネタと米のバランスもあるんでしょうが、そこまでは考えません。福井のY寿司は、とにかくおいしかったと言うしかない。ヒラメ、水ダコ……ああ、思い出すだけで生つばが出ちゃう。しょうゆでなく塩で食べさせるのも、塩がいいからか、すごくおいしかった」

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