目指すのは池波正太郎

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 これから暑い季節になりますが…・・・。

 「夏はエスニック料理ですね。タイ料理、ベトナム料理、それに韓国料理も。辛いものが好きです」

 国内だけでなく、海外にも旅行されるんですか。

 「アジアが好きで、今まで5回ほど行きました。私の場合、海外旅行はご飯を食べに行くようなものですね。屋台があるところ、現地の人がよく行くような、ちょっと汚いようなところがいいですね」

 人によっては、現地の人が食べるものは受け付けない方もいますが、大丈夫ですか。

 「虫以外だったら現地の食べ物を食べたいです。以前、タイに行った時、道端の店で見たのが、はじめゴマかなと思ったものが、実はアリをソテーしたものとわかり、ダメでした。でも、食べろと言われたらチャレンジする方です。今まで食べてないものは、基本食べてみたいです。まだ食べたことはありませんが、カエルやヘビだったらいけると思います。以前、ベトナムに行った時、卵の中にひながまんま入っているスープが出てきて、ビビりました。ひなには羽やくちばしが付いているんですよ。一緒に行った友達の一人はひなも食べていましたが、私はスープしか飲めませんでした。スープはものすごく味がよかったですけど」

 あまり無理すると、おなかを壊しますよ。そんなご経験は?

 「私は、39度の熱を出していてもご飯は食べられるんですけど、インドに行った時だけはダメでした。ペットボトルの水を飲んではいたんですけど、やられました。それから1週間、何も食べられず、スープ一さじも飲めませんでした。5㌔体重が減り、このまま本当に死んじゃうのかと思ったほど。インドは菌の数が違うんじゃないかと感じました」

 まかり間違えば、そのままガンジス川に流されていたかも。

 「フフフ。確かに、インドという国、あそこだけは他と違いますね」

 チャレンジといえば、作家生活も10年が過ぎて、これから5年、10年、どんなものにチャレンジしていきますか。

 「デビュー当時から、こういうものを書きたいという展望がなくて、物語を思いついたら書く、ということでやってきました。これから先といわれても、真っ白のまんまです。すみません。ただ、なるべくならジャンルも作風もいろいろ振り幅を大きくしたい。おちゃらけたものもシリアスなものも書きたい。狭いところでしか書けないというのは、ちょっと怖いですから。今までのものを深化させつつ、できたら新しい世界の方へ向かっていきたい」

 時代小説というと、例えば山本周五郎や藤沢周平ら大家が何人もいるわけですが、西條さんが目指すのは?

 「目指すとしたら、池波正太郎ですね」

 それは、小説の中に食べ物が多く出てくるから?

 「いや、フィクション性の強い作品が私は好きで、池波作品はやっぱり面白い。今は、史実を織り込んだ歴史小説が売れていて、私にもそういう注文が来るんですが、どうもフィクションとしての振り幅が小さくなって、書いていてどうしても窮屈な感じがある。決して得意とは言えません」

 さて、さかのぼりますが、そもそも西條さんが作家になりたいと思ったのはいつごろですか。そのきっかけを教えてください。

 「小学校の卒業文集に『作家になる』と書いているんです。でも、この時は何も考えていなくて、3歳のころから漫画や本を読むのが好きだったので、本と関わる仕事がしたいという気持ちだったのだと思います。ちなみに、その言葉の後に『結婚して子供2人』とも書いていましたが、そちらの方はダメでした。中学や高校の卒業時には、小説らしきものは何も書いていません」

 3歳というと、かなり小さい時から本と親しんでいたんですね。

 「漫画が多かったですけど、ケストナーの童話や松谷みよ子の『モモちゃんとプー』、新美南吉の『ごんぎつね』などが大好きでした。小学生の時の一番記憶に残っているのは『赤毛のアン』ですね。何回も読みました。翻訳した村岡花子の文章がものすごくよくて、影響を受けました」

 それで、やがて文章を書いてみたいと?

 「いや、その後、中学時代も高校時代も書くことは全くしていませんでした。本はよく読んでいましたが、書くのは好きじゃなかったですよ。学校では作文か感想文しか書かされませんでしたが、作文はエッセーになるのでしょうか。今も時々執筆を頼まれますが、やはり書くのは苦手です。でも中学の時に書いた詩は、国語の先生から褒められたことがあります」

 当時は、どんな本が好きだったんですか。

 「全部、物語、フィクションです。ストーリーが付いていないものは面白くない。起伏の激しい物語が好きでした。だから中学に入ったら読書感想文を書けと言われて純文学を読まされて、イヤでイヤでたまらなかった。心理描写が長く続く小説は退屈で仕方がなかった。唯一面白かったのは芥川龍之介の小説でした。当時だと、ミステリー小説はよくないと公言する先生もいましたね」

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