「肩書、年齢で態度を変えない」

規模の大きな話を書いてみたい

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 「物語を創る仕事がしたい」という子どもの頃からの夢をかなえたのは、小説家デビューした35歳の時だった作家、薬丸岳さん(47)。少年によって妻を殺された男の、真相を執拗(しつよう)に追求する姿を描き、あっと驚く結末が見事なミステリー長編「天使のナイフ」は2005年、江戸川乱歩賞を受賞した。昨年は吉川英治文学新人賞、そして今年は日本推理作家協会賞と連続受賞して波に乗っている。

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 日本推理作家協会賞(短編部門)の受賞作は「黄昏」という作品ですね。高齢の女性が死んで発見されたという事件にまつわる人間模様が点綴(てんてい)され、人生の哀歓がしみじみとした余韻として残るミステリー。作中の俳句がアクセントになっていますが、俳句はよくお作りになっているんですか。

 「いえいえ、あれは急きょ無理やり作ったもので……」

 薬丸さんの作品は、デビュー作から少年犯罪にまつわる親子問題、加害者・被害者の苦悩、更生の可能性など、現在も論議が続く難しい社会問題を、巧みにストーリーにしている小説が多かったですが、今回のは高齢者の生き方が描かれていますね。

 「今まで以上にもっと幅を広げて書いていきたいと思っています。少年犯罪小説はまたいつかは書くかとは思いますが、すでにだいぶ出し切った感じがしているので、しばらくはないですね。先輩作家から、もういいよと言われもしました」

 どういうジャンルに広げていこうというお考えですか。

 「この数年、今までやっていなかったジャンルをやっています。一つは去年から中央公論新社が発行している『小説BOC(ボック)』で連載している8作家9名によるコラボです。そのうち僕は明治時代の海賊の話を書いています。もう一つは6月に刊行されたアンソロジー『宮辻薬東宮』(講談社)です。これは宮部みゆきさん、辻村深月さん、僕、東山彰良さん、宮内悠介さんの5人の作家の頭文字を冠した作品です。前の作家の短編の内容を継いで次の作家が書いていくというリレー方式です。ちょっとホラー・テイストですが、これを含めてどんどんいろんなことをやっていきたいですね」

 新たにチャレンジしたい分野というと?

 「規模の大きな話を書いてみたい。ものすごくダイナミックなストーリーですね。今までなかったようなアクションをふんだんに取り入れて。そうですね、例えて言えば、『ホワイトアウト』のような」

 5年先、10年先を見据えて、の計画はあるんですか。

 「かなり先を見据えてというのは、僕の仕事の仕方ではないんです。将来を考えるよりも、今気になっている問題や設定があったら、それでこういう物語を書こうと思うことが多いですね」

 薬丸さんは10代から「物語を創りたい」という思いを強く持っていて、高校卒業後も、大学進学を蹴って劇団に入るなど、芝居志向の青年だったそうですが、これからは芝居の脚本を書くお気持ちはあるんですか。

 「まったくないですね。僕はまず小説で圧倒的に満足できる作品を出したい。もしそんな結果を出せたら、次のチャンスとしてそういう気持ちになることがあるかもしれないけど、今はまだ作家としても全然だと思っていますから、まずは小説家としていい作品を創っていきたいです」

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