何を書こうかと迷い苦しむ、その繰り返しですよ

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 このシリーズはそれぞれ本格ミステリー界では高い評価を得ているようですが、やはりこれはなかなか知的な作業ですから創造は簡単じゃないですよね。

 「編集さんはなるべく本格ミステリーを書けというんですが、かなりの知的作業なので、正直言って、1年に何作も書けません。本格ミステリー界から評価されているというのは、本当にありがたいことです。」

 でも、読者の予想を裏切ることがポリシーでもあり、おそらく創作の喜びであり、作家としてのアイデンティティーでもあるんでしょうね。

 「喜びであると同時に、今度は何を書こうかと迷い苦しむ、その繰り返しですよ」

 以前、このシリーズで有栖川有栖さんにインタビューしたとき、本格ミステリー小説というジャンルが今もあるのは日本くらいなものと聞きました。読者の想像を超えるトリックや設定を作り上げるには、確かに大変な知的作業が必要なんだと思いました。

 「本格ものがメインですが、僕はいろいろなものを書きたいと思っていて、野球小説や青春小説と呼ばれているものも書いています。これは二次的な仕事とは思っていなくて、本格ミステリーと等価だと思って書いております」

 野球にやけに詳しいというか、野球オタクが出てくる小説には笑いました。でも、単にデータに詳しいというより、野球そのものへの愛情というか、きっと書いている人も野球が好きなんだろうなと思えてきました。とくに中日ドラゴンズが。

 「ええ、僕はドラゴンズファンです。一貫して変わりません」

 でも、深水さんのご出身は山形でしたよね。名古屋ではなくて。

 「はい、山形市で生まれて山形市で育ちました」

 だいたい東北地方は昔からジャイアンツファンが圧倒的に多い土地柄でしたよね。それがなぜドラゴンズファンに?

 「僕が生まれたのが昭和38(1963)年で、物心ついたころが巨人V9の時代でしたから、巨人が優勝するところしか見ていなかったんです。巨人優勝は憲法で決まっているんじゃないかと、刷り込まれていました。それが昭和49(74)年、中日が初めて巨人を倒した。星野仙一が投げて打倒巨人を果たした。カッコいい!とドラゴンズファンになりました。クラス全体がもちろん巨人ファンの時代に、一人だけ阪神ファンがいて、ドラゴンズファンは僕だけという状態でした。名古屋に住んだこともないし、行ったのも今まで2回しかないんですけどね」

 やはり、打倒巨人に雄たけびを上げたエース星野にひかれたんですか。

 「いや、僕は高木守道でした」

 そりゃまた子供にしては渋い選択ですね。

 「あの渋いのが好きでした」

 ドラゴンズは最近あまりいい成績を残していませんね。確か昨シーズンはセ・リーグ5位でしたか。応援に行くこともあるんですか。

 「弱くなったからと、ひいきチームをころころ変えるのは本当のファンではないでしょう。以前はよく神宮球場に行って、三塁側で、目の前でピッチャーが投球練習しているのを見ながら応援していました。若い頃はよくスタンドから声を出したりしていましたよ。最近はヤジを飛ばす人がいなくなりましたねえ。ヤジると周りから非難されるみたいな空気があるのかなあ。みんなお行儀よくなっちゃったね。昔は野球好きなオヤジたちが時にユーモア溢れるヤジを飛ばして、スタンドが和むという潤滑油にもなっていたんですけどねえ」

 今シーズンのドラゴンズは、ずばり予想すると?

 「松坂大輔が客寄せで終わらなければいいんですがねえ。ドラフト1位の鈴木博志は、社会人野球ヤマハの投手で、活躍を期待しています。でもまあ、総合的に見て、今シーズンも優勝は無理かな」

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