知の架け橋

「健康・スポーツを語る」(4) スポーツによる観光振興を 地域の宝物を再発見し、活用する

2014年2月3日掲出

 これまでの旅の定番スタイル。それは、日常を抜け出して景勝地を巡り、すてきな宿に泊まって、食事や温泉を楽しむことでした。しかし、旅のニーズが多様化し、「もっと現地の人と交流したい」「その土地ならではのことを体験したい」など、従来の旅では少し物足りなさを感じる人が増えています。そんなニーズに応え、旅先で気軽にスポーツに親しめるような体験プログラムが、各地で実施されるようになってきました。

観光学部生とともに昨年4月、ラフティング大会「第6回御岳カップ」に出場。 ラフティングも旅先で楽しむ注目のアウトドアスポーツだ(左から2人目が遠藤講師)

 日本ではまだスポーツを目的に旅に出ることはまれですが、海外ではスポーツが観光の主たる目的になっていることが多くあります。

 こうした背景から、観光庁は「スポーツで旅を楽しむ国・ニッポン」を合言葉に、新しい旅行形態としてスポーツツーリズムを推進し、観光立国の実現を目指しています。

 まず力を注いでいるのは、オリンピックをはじめとする国際競技大会の招致による訪日観光誘客です。これらは、夢や感動と同時に、多額の経済波及効果を見込んでいるからこその取り組みといえます。また、マラソンイベントや、山間部を駆け抜けるトレイルランニングレースの開催は、増加傾向にあります。そして、本学と包括協定を結ぶ長野県茅野市は、4年計画で白樺湖畔の遊歩道(ランニングロード)の整備に着手しました。高地という土地の特性を生かして、湖畔をスポーツ合宿の拠点にしようと、健康・観光の融合を目指した光振興を進めています。

 スポーツ合宿は、震災の影響をさほど受けず、長期の宿泊を必要とする手堅い市場であることから誘致を目指す地域が多く、同じ長野県にある菅平高原や、北海道、宮崎県、沖縄県などで熱心な取り組みが展開されています。さらに、スポーツを生かして地元の人たちが知恵を出し、その地域のことを深く知ることができる魅力的なプログラムを創っている事例もあります。岐阜県飛驒市には、廃線となった電車の線路を再利用したガッタンゴーと呼ばれるレールマウンテンバイクがあり、年間2万人以上を集客する人気となっています。

 全国に急速に普及している「ご当地ソーシャルマラソン」は、タイムではなく体験を競うもので、コースを限定せず、走りながら地域の名所や飲食店を巡り、ゴール後のパーティーでその体験をシェアする地域発信型のローカルイベントです。地元の人にとっては普段からある何気ない風景や、生活に溶け込んでいるものの中に宝物が潜んでいます。スポーツは、地域の宝物を再発見し、工夫を凝らして活用していくための触媒としても活用され、新たな旅を創造しています。

 このように、スポーツは、国や文化をこえて人々が交流し合えるコミュニケーションツールとして、さらに、域外からの外需獲得による地域経済活性化の切り札として、その存在価値を高めています。スポーツによる旅行産業のイノベーションに、期待が高まります。

えんどう・あきひろ

1980年東京都生まれ。東海大学大学院体育学研究科修了。専門はレジャー学、スポーツ経営学。日本レジャー・レクリエーション学会、スポーツ社会学会、日本スポーツツーリズム推進機構(JSTA)、日本エコツーリズム協会などに所属。

(記事提供:「東海大学新聞」2013年9月1日号)

関連リンク:観光学部観光学科
http://www.u-tokai.ac.jp/undergraduate/tourism/department_of_tourism/index.html

知の架け橋の一覧