知の架け橋

「住を語る」⑤
宇宙に住まう未来を考える
資源あふれる大海原を拓く
工学部建築学科 十亀昭人 准教授

2015年10月1日掲出

(写真)筆者らが開発している、3次元展開構造物を用いた小惑星捕獲器の概念図

 恥ずかしながら、5歳の息子とおいしいおやつをめぐって争うことがある(笑)。家庭というローカルな場所でもそうだが、グローバルな観点から見ても人類の歴史上の不幸な争いは、限られた資源をどちらが手にするかを巡って起こっていることが少なからずある。たとえば、目の前にあり余る資源が転がっているとしたら、私たちは今までと同じように争いを続けるだろうか。きっと地上の争いごとの多くは、無意味なものとして減少していくようにも思われる。

 私は現在、宇宙建築学という分野に携わっているが、人類が宇宙居住を目指すうえで、どうしても避けて通れないものが、そこでの営みに不可欠な資源の調達方法の確立である。宇宙空間で居住するための資源を、わずかに残された地球から運び上げるのはどだい無理な話であり、宇宙空間に存在する資源を使わない手はない。

 幸い私たちの太陽系には、小惑星帯を筆頭に莫大な資源が多く眠っているのである。昨今、地球資源の枯渇が叫ばれているが、遠い銀河の彼方からこの状況を見たとしたら、「地球人はなぜ目の前の太陽系の資源を使わずに、資源不足を嘆いているのだろう」と不思議に思うに違いないのである。

 近年、アメリカ航空宇宙局(NASA)の「小惑星捕獲計画」が、世界の宇宙開発における大きな話題として取り上げられ始めた。オバマ大統領が議会に莫大な予算案を提出したことで、大きな話題となったのも記憶に新しい。現在、アメリカの多くのベンチャービジネスがこの計画に参入し始めている。

 私たちの研究室では、これまで培ってきた日本独自の展開構造技術を、このような計画に生かせないかと研究を進めている。図は、NASAの小惑星捕獲計画において、私たちの提案する展開構造物を用いた際の概念図である。これは、3次元的に展開できる構造物を本体前部の捕獲部に使用するもので、軸方向、周方向を同時に広げられるため、従来の筒状の展開構造に比べてより高い収納/展開効率を確保することが可能となる。

 今後は、このような技術をNASAに提案し採用の知らせを待つ、という他国任せのプロジェクトではなく、ぜひ日本独自の小惑星捕獲計画の立案が待たれるところである。日本の技術力は小惑星探査機「はやぶさ」の成功もあり、小惑星サンプルリターンの分野では世界のトップにある。その日本においてこのような計画が独自に立ち上がることを切に願ってやまない。

そがめ・あきと
1970年愛媛県生まれ。東海大学工学部建築学科卒業後、東京工業大学大学院総合理工学研究科博士課程修了。博士(工学)。2010年に東海大学「はやぶさ」プロジェクトサポートチームの一員として文部科学大臣表彰、宇宙開発担当大臣表彰を受ける。日本航空宇宙学会、日本建築学会などに所属。専門は宇宙建築学。

(記事提供:「東海大学新聞」2014年8月1日号)

関連リンク:工学部建築学科
http://www.u-tokai.ac.jp/undergraduate/engineering/architecture_and_building/index.html

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