知の架け橋

「幸福を考える」②
エネルギーの消費と幸せを考える 新たな変革の時代へ
工学部電気電子工学科 庄 善之 教授

2017年1月5日掲出

 エネルギーの消費と幸せを考える新たな変革の時代へ現代社会は多くのエネルギーを消費することで、豊かな暮らしを維持しています。人類はいつごろからエネルギーを使い、幸福な暮らしを始めたのでしょうか。人間と動物の違いの一つは、人間は火というエネルギーを利用することにあります。このことから人類は、誕生当初からエネルギーを消費することで幸福を得ていたことになります。

 原始の人類は火を何に利用していたのでしょうか。寒い日に暖をとるために用いていたのでしょう。また、米などの食料を加熱調理し、食料からの栄養摂取の効率を高めるためにも火は使われていました。人間が生米ではなく、炊いたご飯を食べる理由は、火というエネルギーを用いることでお米からできるだけ多くの栄養を摂取するためです。これらによって人類は比較的快適に生活できるようになりました。また、生きることに余裕が生まれることで、さまざまな文化が生まれ、個人が生活を楽しむ幸せを得たと考えられます。

研究室の学生が実験用に作製した燃料電池

 人類の長い歴史の中でほとんどの期間は、エネルギーを暖房と調理程度にしか使っていませんでした。18世紀には石炭を燃料とする蒸気機関が発明され、イギリスで産業革命が起こります。歴史の教科書では、「いろいろな製品が工場で作られ始めた変革」と説明されています。しかしエネルギーの視点で産業革命を考えると、石炭のエネルギーを利用することで、人力に頼らず製品が製作可能になったといえます。エネルギーを用いることで、人類は楽をしていろいろなものを容易に入手できるようになりました。現在につながる大量消費時代の幕開けです。人類は物欲を満足させられるようになり、そのことで幸福を感じるようになりました。

 現代社会ではエネルギー源の中心が石炭から石油に移り、一人が消費するエネルギー量は飛躍的に増加しています。エネルギーの消費によって、人類は快適な生活を送っています。また、余暇を楽しむことも可能になり、人々はそれぞれ趣味を持てるようになりました。生きることで精いっぱいであった古代から比べると、現代社会に生きる私たちは、大量のエネルギー消費によって、人類の歴史で最も幸せな時を過ごしています。

 石油などの化石燃料を源とするエネルギーの大量消費は、地球温暖化を引き起こし、生活しづらい環境を地球規模で作りつつあります。エネルギーの消費が新たな不幸を生んでいると感じます。エネルギーの消費に罪悪を感じる人もいるようです。太陽光、風力発電などのクリーンエネルギー技術は、地球環境へ負荷をかけずに発電することが可能であり、地球温暖化の抑制に貢献できます。これらの技術を普及させることによって、新たな不幸を拡大することなく、人類が謳歌している現在の幸福を持続させることが可能になるのです。

 私はクリーンエネルギー技術の一つである燃料電池を研究しています。私の研究は人類を幸福に導くということに気づき、今幸せを感じています。

しょう・よしゆき
1968年北海道生まれ。東海大学工学部卒業。東海大学大学院工学研究科電気電子工学専攻修了。専門は材料工学。応用物理学会などに所属。

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