知の架け橋

「国際化を考える」④
海外看護研修から学ぶ 拡大する国際化の流れに備えて
健康科学部看護学科 井上玲子 教授

2017年4月3日掲出

 健康科学部看護学科では、3つの海外研修プログラムを設置している。

 参加する学生は、海外文化に長年触れ、慣れ親しんでいたり語学が堪能だったりする者だけではない。パスポートを初めて手に取る者もいる。そのため参加する前は皆不安気で、しかも緊張のあまりに前日から体調を崩す者も少なくはない。しかし研修先に行ってしまうと学生同士で励まし合い、次第に生き生きとしてくる。教員の陰に隠れて英語で言葉を発せなかった学生も、研修の半ばごろには手助けが必要なくなり、自分から現地の教職員、学生たちに話しかけている。まさに学生の柔軟な適応能力と無限なエネルギーを感じる瞬間である。

 看護教育では2009年の大学系基礎教育カリキュラム改正で、国際的に活躍できる能力を養うための内容が必須となった。具体的には国際社会を基盤とした広い視野を持ち、看護師として国内外の協働を考えていくことである。そのため教育機関の使命は、医療の高度化や看護ニーズの多様化など、社会の要請に対応できる看護職を養成することであり、今や看護職にとって国際的視点は欠かせないものとなった。

ディアコネッセ大学の看護学生との東海大学医学部付属病院実習(16年度)

 このような変遷から、本学科は早くから国際的な看護職の養成を念頭に、1996年、米国ミネソタ州にあるメイヨメディカルセンターでの研修プログラムを開始した。同センターは、全米でも最も優れた病院としてランクインされている施設である。ここでは学内実習を終了した3、4年生が米国の先端医療現場に直接に触れ、看護技術をさらに磨くことができる。毎年3〜5人ほどの学生が参加し、将来の専門性を考えるよい機会となっている。

 さらに、2008年に開始したデンマーク研修、2011年のハワイ研修がある。デンマーク研修は看護学科だけではなく社会福祉学科、医学部医学科の3学科合同研修という伊勢原校舎ならではのユニークなプログラムである。福祉先進国であるデンマークの地域医療を、学年も将来の職種も異なる学生たちが事前学習をはじめ、長期間ともに学ぶことで、将来の多職種連携をイメージしていく。また2016年度は、この研修でお世話になっている協定校のディアコネッセ大学から看護学生が来日し、2週間の研修を行った。本学科の学生たちは2週間、授業や実習を通じてホスト役を務めている。『看護師になる』という共通の目標を持った仲間として学生同士、国を超えた絆が結ばれた様子であった。

ハワイ研修でストラウブ・クリニックを見学(14年度)

 1、2年生が対象のハワイ研修は、医療英語に関するコミュニケーションや看護教育現場、外国文化を体験する本学科独自の研修である。英語が苦手だった学生が研修に参加することで国際的な視点に関心を強め、デンマークやメイヨ・クリニック研修へ続けて参加する者も多い。まさにイギリスのことわざにある「学問なき経験は、経験なき学問に勝る」といえるのではないだろうか。

 近年の拡大する国際化の流れは、看護にとっても無縁ではない。我が国ではさまざまな国籍の外国人が暮らし、医療機関で外国人と接する機会も増えてきた。また海外で生活する日本人も増え、発展途上国や海外の施設で看護活動をする者も多数いて、海外の保健事情や異文化の理解はごく当たり前になってきた。そのため、これからの学生たちには基礎教育の時期に海外研修を経験し、国際看護に慣れ親しんでもらいたい。

いのうえ・れいこ
1963年神奈川県生まれ。小児臨床看護師を経て東海大学大学院健康科学研究科修士課程、国際医療福祉大学大学院保健医療学研究科博士課程修了(看護学博士)。専門は小児の家族看護学。著書に『小児がん家族会ピアサポーターガイドブック』(創英社)など。

(記事提供:「東海大学新聞」2015年7月1日号)

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