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クローズアップ研究室

科学の目で筋トレを開発

2012年5月15日掲出

競技の現場を練習に反映する

 湘南校舎のバレーボール部が男女で優勝した全日本インカレや箱根駅伝など、年末年始は東海大学のアスリートの活躍が期待されるスポーツイベントが目白押しでした。そのような華やかな表舞台に立つ選手たちを支えている裏方の一人が、スポーツ医科学研究所の有賀誠司教授です。


「トレーニング研究は、はじめに現場ありき」と話す有賀教授は、実際の競技の動きを取り入れたトレーニング開発に取り組んできました。研究成果をもとに、サポートしてきたアスリートも数えきれません。学外では柔道男女ナショナルチームやバレーボール男子ナショナルチーム、長野オリンピックスキー・ジャンプの金メダリスト船木和喜選手らの活躍を支えてきました。

 筋肉の役割は座る、立つ、腕を伸ばす、膝を曲げるなど、日常生活の動作一つひとつを支えるだけでなく、内臓や骨を保護し、体温の調節機能にもかかわっています。筋力アップと維持はアスリートだけのものではありません。年齢性別問わず日常生活を営むうえで大切です。

 東海大学の自由選択科目、「身体トレーニング論(健康・スポーツ概論F)」も担当している有賀教授は、「歩き方や姿勢の良し悪しひとつでも人に与える印象は違います。就職活動でも有利になります。ただ、美しい姿勢や立ち姿は、それを支える筋力あってのもの。何時間も重いダンベルを上げ下げする必要はありませんので、ぜひ取り組んでほしいです」と語りました。

長年の経験と勘を科学的に実証する

 湘南校舎に15号館が完成したのは1995年のことです。地下には日本最大規模のトレーニング施設があり、日本一、世界一を目指す運動部の選手たちが専門家の指導のもと、鍛錬に励んでいます。有賀教授はここで、運動部15団体の筋力トレーニングやコンディショニングの指導を担当しています。

 施設ができるまで、運動部の筋力トレーニングは特別な設備や科学的根拠がないまま、経験に頼った方法で行われるケースが多かったといいます。

 しかし有賀教授は、経験から導き出されたトレーニングに「なぜ効くのか」「どうすればより効果的か」という科学的な論拠を求めました。


自らも日々のトレーニングを欠かさない

 筋トレの成果で重いバーベルを持ち上げられるようにはなったが、試合で結果が出せない選手も多いのです。そこでトレーニングをどう改良すれば実戦で力を出せるのかを考えます。各競技の特性や選手の特徴に合ったプログラムを作成し、指導方法を確立させるのも研究目的の一つです。

 例えば、柔道選手の握力は一般男性と大きな違いはないといいますが、柔道着の襟をつかみ、引っ張る力は約3倍というから驚きだ。有賀教授が考案したトレーニング方法の一つ「柔道着懸垂」では、鉄棒にかけた柔道着をつかんで懸垂腕屈伸します。柔道着をつかんで離さない能力(把持力)を高めるために行うものですが、海外にも普及し柔道のトレーニング方法として定着しています。

 「このようなトレーニング方法を考案するにはまず、各運動部の練習風景を観察します。競技ごとの動きや筋肉の使い方、選手の特徴など、現場から得られるヒントをもとに答えを探します」

 筋肉痛になったときぐらいしかその存在を意識しないのはもったいない。湘南校舎などには学生が利用できるトレーニング施設もあります。今からでも遅くはありません。「引き締まった体をつくる」を今後の抱負にしてはどうでしょうか。

ボディビル競技の成果を還元 子どもからお年寄りまで指導

 大学時代は陸上競技部でやり投げに打ち込んでいましたが、専門トレーナーのいるジムへ通ううちに、筋力を鍛えるトレーニングそのものに興味の対象が移っていきました。

 「ボディビルの世界でとことんやってみたい。練習を重ねるごとに体が鍛えられ、成果につながるのが楽しかったです」。

 1991年から94年にかけてミドル級日本代表として国際大会に出場、91年と93年のアジア選手権ではミドル級準優勝という成績も残しました。

 「大学院を修了してメーカーに勤めていた社会人のときでしたから、時間をやりくりして競技に没頭しました。食事も高タンパク低カロリーを心がけ、蒸したササミや温野菜などを小分けにして弁当箱に詰め、仕事の合間に食べていました。当時のプロテインの味はつらかったなぁ(笑)」

 努力を重ねた分だけ自分の体が鍛え上げられる。成果が目に見える形となって表れる楽しさに夢中になりました。

 その後、「競技者だけで終わるのではなく、これまでの経験をスポーツの現場に還元したい」との思いがきっかけとなって研究者の道へ。自身も間違ったトレーニングをしていた経験があるからこそ、科学的な視野でスポーツ選手を支えられる今の環境を選びました。

 有賀教授の研究対象はアスリートだけはなく、成長期の子どもたちやお年寄りまで幅広い。「子どもには体を動かす喜びや楽しさを知ってもらい、お年寄りには足腰を鍛える大切さを介護の問題と関連づけて知ってほしいですね」

あるが・せいじ 東海大学大学院体育学研究科1987年修了。96年に東海大学スポーツ医科学研究所助手。2008年から現職。著書に『一生衰えない筋肉のつくり方』など多数

(記事提供:「東海大学新聞」2012年1月1日号)

関連リンク:スポーツ医科学研究所

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