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クローズアップ研究室

目に見えないガンマ線を観測 宇宙の謎を解き明かす

2012年9月18日掲出

 夜空を見上げると、あちこちに星々が輝いていますが、肉眼で見えているのは宇宙から届く光のほんの一部。地球には可視光以外にも幅広い波長の光が届いています。では、目に見えない光の観測はどのように進められているのでしょうか? ガンマ線天文学を研究している理学部物理学科の櫛田准教授を訪ねました。

カナリア諸島にあるチェレンコフ望遠鏡「MAGIC」。約20カ国の研究者が共同利用している

 人と天体観測のかかわりは古い。紀元前2000年ごろにはエジプト人が天体観測をもとに暦を作っていたことが知られています。17世紀に望遠鏡が発明されると研究も加速し、宇宙の姿がより詳しくわかるようになっていきました。その後、より遠くを見通せる望遠鏡の開発とともに、可視光の研究も進化します。現在その極みにあるのが、アメリカのハッブル宇宙望遠鏡です。一方、20世紀に入ると可視光以外の紫外線や赤外線などの観測も始まります。なかでも近年高い注目を集めるようになった分野の一つが、10ピコメートル(1000億分の1メートル)よりも短い波長を持つガンマ線の観測です。

 ガンマ線は、太陽の8倍をこえる巨大天体が爆発する超新星爆発の残骸や、1平方センチあたり100億トンをこえるような密度の濃い天体(高エネルギー天体)から放出されています。「物質の間を通り抜ける力が強く、真っ直ぐ飛ぶ性質を持っているため、可視光が届かない遠くの星からの光でも地球に届き、どこから来たものかを正確に調べられます。また、病院のレントゲン写真で使われるX線と同じく高い透過力を持つため、天体の内部を知ることもできるのが特徴です」(櫛田准教授)

各国の研究者と協力しかに星雲を調査

右が可視光で観測したかに星雲。左はガンマ線を観測したもの。左では、中心部からガスが吹き出しているのがわかる

 たとえば黄道12星座の1つ牡牛座にある「かに星雲」。この天体は可視光で見るとガスの固まりですが、ガンマ線で見ると中心にパルサーと呼ばれる高エネルギー天体があり、そこからガスが放出されていることが確認できます。高エネルギーガンマ線の本格的な観測が始まったのは1990年代。世界各地の地上ガンマ線望遠鏡(チェレンコフ望遠鏡)を拠点に、各国の研究者が共同研究を行っています。櫛田准教授は、アフリカ大陸の西にあるスペイン領カナリア諸島のチェレンコフ望遠鏡「MAGIC」を使った研究グループに所属し、100ギガ電子ボルト以上の超高エネルギーガンマ線を観測。理学部の西嶋恭司教授らとも連携して宇宙の起源を探っています。

 これまでの研究で、超新星残骸やブラックホールの中心にある活動銀河核などの高エネルギー天体から超高エネルギーガンマ線が検出されていますが、発見天体数が少なく、そのメカニズムは未解明の点が多い。しかも、ガンマ線バーストなどガンマ線が放出されていることは確認できるものの、どのような天体から出ているのか、発生源がわかっていないものもあるといいます。

最先端の技術を用い新しい宇宙像を探る

 本格的な研究が始まって20年と短いこともあって、さまざまな理論モデルが発表されては覆されるのが現状です。櫛田准教授のグループでは、より詳細な観測をすべく望遠鏡の開発を進めながら研究を実施しました。08年には、かに星雲から100ギガ電子ボルトをこえる超高エネルギーガンマ線が出ていることを発見。今年4月には、かに星雲のパルサーから出ているガンマ線のエネルギーが、従来の理論値の50倍から100倍に及ぶことを発表しました。「観測を進めれば進めるほど発見があり、新たな疑問がわいてきます。宇宙全体を見渡せば、まだ発見されていない未知の高エネルギー天体もあるかもしれません。宇宙はどんな物理法則によって形づくられているのか、世界の研究者と協力しながらその謎を一つでも解明していきたいです」

focus

積極的なチャレンジ精神が新たな発見のチャンスに

 世界各国の研究者と共同で研究しているため、海外出張もしばしば。昨年冬にはスペイン領カナリア諸島にあるチェレンコフ望遠鏡「MAGIC」で1カ月間、各国の研究者と寝食を共にしながら観測を行いました。子どものころから積極的な性格だったのかと思いきや、「もともとは引っ込み思案だった」と語ります。転機は大学院生のとき。初の学会発表を前に緊張していたところ、恩師から「せっかくのチャンスなのだから楽しみなさい」と声をかけられました。それ以来、「自分の殻に閉じこもらず、チャレンジしたほうがいい」と考えるようなりました。

 学会では、「どうすれば研究成果の魅力を面白く伝えられるか」を考え工夫を凝らします。授業でも最新の話題を盛り込みながら、自身もその場を楽しむことを心がけています。「日常のコミュニケーションでも同じです。海外の研究者との共同研究でも、積極的に自分から話しかけるようにしています」。

 言葉がうまく伝わらず失敗することや、恥をかくこともあります。「でも話しかけないよりずっといい。専門知識だけでなく、異なる価値観を学ぶこともできます。失敗をたくさんすれば、ちょっとのことではへこたれない精神力も身につきます。要は失敗をどう生かすかだと思います。興味があることを自分なりに調べるなど、どんどん挑戦してほしい。その先には、きっと新しい発見が待っていますよ」

くしだ・じゅんこ 神奈川県生まれ。理学博士。東海大学理学部卒業、東京工業大学大学院博士課程修了。2003年度より東海大学勤務。2012年度より現職。

 (記事提供:「東海大学新聞」2012年5月1日号)

 関連リンク:理学部

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