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クローズアップ研究室

日本の環境に合った品種を作りたい 機能性食品のブラックベリーで南阿蘇村と洋菓子を開発

2013年8月15日掲出

農学部が、校舎のある熊本県南阿蘇村と“農産官学連携”で開発を進めてきたブラックベリーの「レアチーズケーキ」と「オムレット」がこのほど完成しました。アントシアニンやポリフェノール類を多く含むブラックベリーは、近年、機能性食品としても注目されています。20年以上にわたって小果樹類を研究し、今回の商品開発にも携わった農学部応用植物科学科の小松春喜教授の研究室を訪ねました。

(写真左)南阿蘇村の農家で栽培しているブラックベリー。大人の背丈ほどの高さで栽培もしやすい
(写真右)果実は熟すと濃い紫色になる

 桜や梅と同じバラ科のブラックベリーは、春になると白や薄ピンクの花を咲かせ、夏には濃い紫の果実を鈴なりにつけます。「南阿蘇村は、年間1000万人以上が訪れる観光地です。村から『何か特産品にできるものはないか』と相談されたときにブラックベリーを勧めたのは、観光客に春には花を見て、夏には果実を摘んで楽しんでもらえると考えたからです」

 九州キャンパスと南阿蘇村は2006年に地域総合交流に関する協定を締結しており、小松教授は農業産業部会の副会長も務めます。その縁で 〝特産品〞の相談があったのは09年。当時のゼミの学生らと農家を訪れ、約2800平方メートルに100株を植えつけました。「農薬もほとんど必要なく、低木で、大人の背丈ぐらいの高さにしかならないので、女性や年配の方でも手入れをしやすい。過疎化で農業の後継者も減ってきていますから、そういう面でも利点があります」

4年間の成果で3種類の商品が完成

 育て方の講習会を開き、各農家を訪れて植えつけや剪定の仕方も教えました。害虫駆除については、応用昆虫学が専門の村田浩平准教授(応用植物科学科)が担当。しかし、「座学で聞くのとやってみるのとでは違います。うまく栽培できず、研究室を訪ねてくる方もいる」と小松教授は言います。

 試行錯誤をしながら、田畑の一角で栽培を続けて4年。収穫量が安定してきたことから、学校法人東海大学総合研究機構の「商品開発助成」=Key Word参照=に採択を受けて、製菓の開発に取り組みました。昨年10月に、ミルクとブラックベリーを混ぜ合わせたアイスクリームが完成。今年4月には、地元の清正製菓㈱にレシピ考案と製造を委託した、レアチーズケーキとオムレットが新たにできあがり、すでに販売が始まっています。

レアチーズケーキ(左)は1個294円、オムレットは210円(ともに税込)で販売している

 「ブラックベリーは眼精疲労の回復にいいとされるアントシアニンと、抗酸化作用を持つポリフェノール類を多く含んでいます。これらは加工してもあまり効果は落ちないという分析結果も出ています。機能性食品としても注目される商品になるとうれしいですね」

「地域に貢献したい」品種改良にも着手

 小松教授が小果樹類を研究し始めたのは、農学部に着任してから。「最初はりんごやぶどうなどの研究をしていました。しかし阿蘇は雨が多く、そのほとんどが果樹の生育期にあたる6、7月に集中します。気温も湿度も高くなると病害虫が多くなるため、果樹の産地はほとんどありません」

 そこで研究対象に選んだのが小果樹類でした。校舎周辺には野生のキイチゴなどが生えていますが、日本では改良がされていないため、とげが多く、食用には向きません。「同じ研究をするなら、地元に貢献できて、機能性のあるものをと思っていました。品種改良を重ねて、日本の環境に合ったものを作りたい」

 すでにアメリカで改良された大きくておいしい栽培種と、路地栽培のできる日本の野生種を掛け合わせた雑種はできあがっており、さらに野生種の中には11月ごろに熟すものもあるといいます。「農家にとっては果樹が少ない時期に出荷できれば高く売れるわけですから、収穫時期も広げていけたらいい。先は長いですが、夢のある研究です」

レアチーズケーキとオムレット 2商品の発表試食会、学生や教職員に好評

 農学部では、ブラックベリーを使用したオリジナル製菓「レアチーズケーキ」と「オムレット」の発表試食会を、4月20日に阿蘇校舎で開催しました。会では、小松教授がブラックベリーの成分や開発までの経緯を説明したほか、レシピの考案と製造を担当した清正製菓の三池勲取締役統括本部長が、ソース作りの工夫点などを紹介しました。ワインレッドからピンクへの鮮やかな色合いと、ブラックベリーのさわやかな酸味が特徴で、参加者からも、「独特の風味があり、とてもおいしかった」と好評を得ていました。どちらも4月21日から、熊本市内の洋菓子店「白い貴婦人」の直売店6店舗を中心に販売が始まっています。

Key Word
商品開発助成

 学校法人東海大学総合研究機構が、実学・実践の教育・研究による成果および技術・知見等を、東海大学ブランドとして商品化するにあたり、必要な経費を助成するもの。商品開発行為を通じて広く社会に発信することで、開かれた大学としての社会貢献を目的としている。

こまつ・はるき 1952年長野県生まれ。静岡大学農学部園芸学科卒業。同大学院農学研究科(修士課程)農学専攻修了。大阪府立大学大学院農学研究科(博士課程)農学専攻単位修得満期退学。

 (記事提供:「東海大学新聞」2013年6月1日号)

 関連リンク:農学部応用植物科学科

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