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クローズアップ研究室

自由な遊びが最高の運動やりたい遊びをやりたいだけ 楽しみながら体をつくろう

2014年6月16日掲出

 2020年の東京オリンピック開催が決まり、2月には政府が「スポーツ庁」設置に向けて準備を始めるなど、「スポーツ立国ニッポン」の機運が高まっています。しかし、体育学部生涯スポーツ学科の知念嘉史准教授は、「若者の運動能力は確実に低下していて、日常生活に支障が出るほど危険な状態になっている人も増えている」と警鐘を鳴らします。実態はどうなっているのでしょう? 知念准教授を訪ねました。

 東海大学で各学期のはじめに行われている新入生対象の体力測定。知念准教授は、「多くの学生の動きが明らかにぎこちなくなっている」と話します。50メートル走で転んで受け身がとれなかったり、ボールをうまく投げられなかったりする学生が年々増加。運動が得意なはずの体育学部生でも、専門の競技に関する能力は高いものの、それ以外の動きはダメという学生が増えている。それは、子どもの頃から特定の種目だけを行っているため、他の種目や遊びを経験することができず、さまざまな動作を習得していないと思われます。

 「受け身がとれない、ボールがうまく投げられない学生も、子どもの頃に外遊びが少なかったり、体育が嫌いであったりするため、さまざまな動作を行う経験が少ないのです。」

 知念准教授はその背景に、「幼児期の過ごし方がある」と分析します。研究では、神奈川県内の幼稚園と協力して園児が自由に遊ぶ様子をビデオカメラで記録。運動能力を高めるとされている36の動き=表参照=に分類して、園児がどの動きを何秒行っているかを計測し、ある特定の動作は頻繁に行っているが、ほとんどの動作はあまり行われていないことが明らかになりました。今の子どもたちは、遊びの種類が少なく、伝承遊びなどの「昔の遊び」の必要性が高まっています。その結果を体力測定や生活習慣の調査データと組み合わせ、子どもの運動能力の向上と日常生活の関係を明らかにしようと試みています。

限られた運動が子どもの能力を奪う

(写真)知念准教授は「近隣の子どもたちに遊びの機会をつくろう」と、学生たちと毎月1回程度湘南校舎でイベントを行っている。毎回、前半を自由な遊びの時間にあて、後半は学生が考えたゲームを行う

 これまでの研究で、園児が自由に遊んでいる時間が短い傾向があることが判明。カリキュラムに運動を取り入れている場合でも、跳び箱や鉄棒など特定の動きに限定され、運動時間も短いことがわかってきました。

 「元来子どもは、遊びの中でさまざまな動きを習得していたのですが、その時間が減ったため基本的な運動能力が育っていない。そんな子どもが成功と失敗が明確な跳び箱をやってもうまくできず、運動嫌いになってしまう。そしてますます動かなくなるという悪循環が生まれているのです」

短時間の自由時間で生活が一変する

 その対策として「遊びたくなる環境をつくろう」とアドバイス。一昨年には幼稚園に、高い台によじ登って飛び降りたり、ロ-プを使って壁を登ったりする手づくり遊具を設置。朝一番に「遊びの時間」を設けて自由に遊べるようにしたところ、園児の運動能力に改善が見られたといいます。それまではぼうっとしがちだった子どもも積極的になり、就寝時間も早くなるなど生活習慣が改善する効果も出ています。

 昨年度からは、熊本市の付属かもめ幼稚園とも連携。園児の体力測定や生活習慣調査を行い、1月には保護者と教員を対象に体を動かして遊ぶとともに、生活を整えることの重要性について講演もしました。

 では大学生や大人はもう手遅れなのでしょうか?「運動というと競技スポーツを思い浮かべがちですが、運動能力をバランスよく鍛えるためには、鬼ごっこやキャッチボールなど、簡単で楽しく体を動かせる遊びをいろいろと行うことで十分な効果があることがわかってきています。それは大学生や大人でも同じ。難しく考えず、いろいろなスポーツや遊びを楽しんでください。楽しむことで少しずつ本気になり、体も心も健康になると思います」

focus
やりたいことをやりたいだけやろう

 「運動は楽しくなければ続かない」が持論。「生活が便利になって、ほとんど体を動かさなくても日常を過ごせる時代。だからこそ、楽しむ要素が必要になっているんだと思います」

 中学、高校とハンドボールに打ち込み、高校3年時には国民体育大会で優勝も経験しました。「大学では競技とは違う観点からスポーツとかかわりたい」と、体育学部社会体育学科(現・生涯スポーツ学科)に入学。レクリエーションとしてのスポーツを専門的に学びながら、学生サークル「野外教育研究会」でキャンプやスキーに挑戦しつつ、子ども向けイベントを企画・運営してきました。その中で、運動には人を明るくしたり、仲間づくりができたりと、さまざまな効果があると感じてきました。

 「やりたいことをやりたいだけやろう」とも思っています。趣味はキャンプ、スキー、渓流釣り、サイクリング、シーカヤックなどなど。最近はゴルフも始めました。楽しみを1つのことに絞り、極めるだけではなく、楽しそうだと思ったことをやりたいだけ楽しむことにしています。夢は、アメリカ・カリフォルニア州にある約300キロの自然散策路「ジョン・ミューア・トレイル」を歩くことです。「世の中には楽しいことがまだまだたくさんある。これからも、いろいろなことに挑戦していきたい」

ちねん・よしふみ 

1969年沖縄県生まれ。東海大学大学院体育学研究科体育学専攻修士課程修了。東海大学付属本田記念幼稚園勤務などを経て2005年より現職。「夏季野外活動理論演習」「幼児と遊び演習」などを担当。専門は幼児体育・野外教育。

 (記事提供:「東海大学新聞」2014年5月1日号)
 関連リンク:体育学部生涯スポーツ学科

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