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クローズアップ研究室

蓄積されたデータを分析して消費者の「迷い」を可視化する

2016年3月15日掲出

 インターネットをはじめとするIT技術が発達した現代。そこで得られる膨大なデータを分析することで、企業が利益を得るための対策を講じることは一般的になってきました。この動きは今後どのような広がりを見せるのでしょうか? マーケティング工学や金融工学を専門とする情報通信学部経営システム工学科の田畑智章准教授に聞きました。

 「最終的に同じ商品を手に入れたとしても、ひと目ぼれをした人、何度も悩んだ人、なんとなく買った人など、さまざまな人がいます。そこに至るまでの経過時間や理由は千差万別なのです。それをデータ化し、消費者の購買行動を『迷い』という新たな指標を使って分析することで、マーケティングに役立てたい」と語る田畑准教授。

 購買に至るまでの消費者の迷いの原因を探り、それを取り除くことができれば、「悩んだ結果、最終的には買わなかった」という人をなくすだけでなく、購買の意思決定にかかる時間を短縮させることで商品の回転率を上げることができると考えて研究を続けています。

なぜ迷ったのか? 心の動きを探りたい

 とはいえ、迷いの原因を探ってデータ化するのは容易なことではありません。

 スーパーなどで商品を購入する際、レジのスキャナーで商品バーコードを「ピッ」と読み取ることで、いつ・どこで・どの商品を・いくらで、といったデータがリアルタイムに近い形で店側に蓄積される。いわゆるPOS(Point of Sales)データと呼ばれるものです。これを用いて、「デザインが気に入った」「値段が安かった」などの購買理由を解き明かす統計学的な分析モデルはすでに確立されています。

 しかし購買時のデータであるPOSデータをもとにした従来の分析モデルでは、該当の商品を消費者がいつチェックし、最終的に購買するまでの間にどのような心の動きがあったのかを読み解くことは困難です。POSデータ以外の新たなデータを収集し、分析することが求められるのです。

IT技術の発達でデータ収集が可能に

 「そもそも、『迷い』をテーマに研究を始めたのは大学院生時代から。しかし当時はインターネットが一般的には普及しておらず、私が求めるデータを手軽に収集する手段がなかなか見つかりませんでした」

 それから20年近くが経ち、インターネットが急速に発達した時代が到来したことで、ようやく環境が整ってきました。

 たとえばオンラインショップで商品を購買しようとした際、私たちは興味を持った商品をクリックし、その情報を得たうえで購入の可否を決定しています。すなわち、何時何分にどの商品情報に何回アクセスしたのかはもちろん、最終的に商品を購入したのか否かということまで、すべてデータとしてそろうようになったのです。

 これ以外にも腕時計型や眼鏡型など身につけて持ち運ぶことが可能なウエアラブルコンピューターを活用すれば、店内に入ってどの商品をどのタイミングで眺めたのかといったデータも比較的簡単に入手できます。

 「現段階では『迷い』を分析するために必要なデータの収集・解析方法を理論としてまとめ終わったにすぎません。今後は私が考えた分析モデルに従ってデータを収集し、実際の数値を当てはめていく必要があります」

 自身の考えをマーケティングに役立たせるため、ライフワークとしてこれからも研究を続けていく考えです。


focus

問題の本質に目を向けて
徹底的に議論を交わそう

 「学生たちには日ごろから、『“問題”は何かを徹底的に考えなさい』と言い続けています」と田畑准教授。「私たち人間は問題や課題が見つかった際、すぐにそれを解決したがる。でも、まず考えなければならないのは、『なぜ、その問題が起きているのか』『ここでの問題は何なのか』ということなのです」

 “問題解決”に目を向けるようになったのは、システム論を学んでいた大学時代。文系の学生でありながら、統計や微分積分を使って工学的にシステムを表現する、どちらかといえば理系寄りのゼミに所属していたときのことです。問題の本質を問う姿勢がすべてにおいて重要、という考え方に触れたことで学問の面白さを知り、やがて文系から理系の道へ。

 そんな田畑准教授が目指すのが、学生たちが積極的に意見を交換し、気軽に相談できる空間をつくること。ゼミ生には問題解決をテーマに、2、3カ月にわたって徹底的に議論をさせるそうです。

 昨年7月からは、有志学生とともに「ビジネス研究会」を立ち上げた。月1回のペースで企業経営者を招き、参加学生が自由にビジネスアイデアを発表。その種をいかにして育てられるのかを、全員で議論しています。

 「いずれはここから、実際に起業する若者が出れば面白い!」

たばた・ともあき

1971年東京都生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。同大学院社会科学研究科、理工学研究科修士課程修了。同大学院理工学研究科博士課程満期退学。東京富士大学経営学部准教授を経て、2013年から東海大学に着任。落語が大好きで講義の進め方の参考にもしている。

(記事提供:「東海大学新聞」2016年2月1日号)
関連リンク:情報通信学部経営システム工学科

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