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クローズアップ研究室

どうやったら英語が身につく?
赤ちゃんの習得法に学ぼう

2016年8月15日掲出

文学部英語文化コミュニケーション学科 保坂 華子 准教授

「グローバル社会で活躍するには英語が不可欠だ」と言われて一念発起して勉強したものの、思うように力がつかず挫折した……そんな経験をした人も多いのではないだろうか。あるいは、思うように成績が上がらず、すっかり苦手になってしまっている人もいるかもしれない。では、どのように勉強するのが一番いいのか? 音声学や英語教育法を研究する保坂華子准教授に聞いた。

 中学、高校と6年間も勉強してきたはずなのに、英語が身についていないと感じている。そんな人は、その後も英語が上達しない傾向が強いと保坂准教授。

「全くの初心者よりも、過去に勉強した経験のある人のほうが、少しの失敗であきらめやすい。負のスパイラルから抜け出すためには、意識を変えるところから始めてほしい」と語る。

違いを知ることが苦手克服の第一歩

 まずわかっておくべきは、英語と日本語は全く違う言語だということ。文法の違いは一目瞭然だが、発音の違いとなると大学生でも意識できていない人が多いという。

 左の図「日本語と英語の母音の比較」を見てほしい。日本語の母音を発するときに使う場所は口の中央に集中しているが、英語は口全体を使う。しかもヨーロッパ人は腹式呼吸が一般的で、日本人は胸式呼吸と息の仕方も違っている。

 英語を話せるようになるためには、その違いを理解して、正しい発音方法をしっかり身につける必要がある。「スポーツが上達するためには、基礎練習が大切ですよね。語学も一緒。本当にうまくなるためには基礎を繰り返して練習する以外、近道はありません」

何度も繰り返すことで「聞き取る力」を養う

 もう一つ重要なのが「聞き取れない言葉は話せない」という音声学の基本だ。「赤ちゃんは生まれる前の7カ月ごろから外の音を聞き分けています。言葉を話すようになるのは生後10カ月ほどしてから。音声学では、それ以前はすべての言語の音を発する力が備わっていると考えられています。その中から環境に適応する形で聞き取れた音を選択し、必要のない音を捨てていくんです」

 保坂准教授が取り組んでいる研究でもその傾向は出ているという。両親が日本語しか話さなければ、子どもも日本語しか話せない。ところが父親の母語が英語で母親が日本語の場合、それぞれの母語に触れる環境を用意すれば4歳の子どもでも両方の言語が話せるようになり、相手や状況を判断して使い分ける子もいるという。「赤ちゃんも最初から両親の言葉を理解できているわけではありません。でも生きるために必要なので、必死で聞き取ろうとする。それを繰り返すことで話せるようになります」

 では、大人になってから「聞き取る力」をもう一度獲得するためにはどうしたらいいのだろう? 最も効果的なのは、同じ音声を集中して繰り返し聞くトレーニングだという。音楽でも映画でも、ニュースでも何でもいい。最初は単語1つしかわからなくても、何度も繰り返すうちに聞き取る能力が磨かれていく。

 もちろん、実践も大切だ。「苦手な人ほど、話したがらない傾向がある。でも、聞ければ必ず話せるはず。アメリカの自動車王ヘンリー・フォードも、「できると信じたことはできる(If you think you can, you can)」と語っています。この言葉を信じて、まずは身近にいる留学生に失敗を恐れず話しかけてください。通じたときには絶対楽しくなるはず。その経験が上達の第一歩です」


focus

イギリスで受けたショック
音から英語教育を変えたい

 英語教育に疑問を持つようになったのは、学生のころに「中学、高校から含めて10年も勉強するのに、なぜ話せない人が多いのだろう」と思ったのがきっかけだった。

「日本人は文法は得意でも、発音に自信がない人が多いんです。片言で話してはいけないと考えるあまり、自分の意見を発言しない傾向もある。その結果、大学院生のときに留学したイギリスでは、日本人は英語が下手で意見もないと思われていました。その状況をなんとか変えたいと思ったんです」

 その後、専門とする「音声学」の観点から、第2言語として英語を習得するための方法や英語の初学者がつまずきやすいポイントなどを分析。研究成果は授業にも取り入れながら、よりよい教育法を模索している。近年では、生活環境と言語習得の関係や英語的な考え方の習得法などにも視野を広げ、理工系との連携も進めている。

「ものすごく広い分野に取り組んでいるように見えるかもしれませんが、すべては言語と教育というキーワードでつながっている。これからも広い視野で分析を進め、『音』の面から日本の英語教育の環境を変えていきたい」

ほさか・はなこ

兵庫県生まれ。神戸大学大学院文化学研究科博士課程(満期退学)。イギリス・バーミンガム大学大学院英語学科博士課程修了後、2007年から東海大学に着任。専門は、応用言語学、音声学・音韻論、英語教育学など。

(記事提供:「東海大学新聞」2016年4月1日号)

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