歴史観に裏打ちされた人材、リーダー育成が急務

文理融合の新たな教育を目指し1942年に産声をあげた東海大学。現在は、21学部を擁する総合大学として各界に人材を輩出している。東日本大震災を経た日本で、大学の役割、責任とは何なのか。髙野二郎東海大学長と岸井成格毎日新聞主筆が、「今、大学が果たす役割」をテーマに、人材育成やリーダーシップ論、文明論について語り合った。
【まとめ・毎日新聞社 記者 銅崎順子】


岸井主筆

岸井主筆(以下、岸井) 変化の激しい難しい時代ですが、ますます大学の果たす役割は重要になっていると思います。第一に大学が置かれている位置といいますか、抱えている問題、今の若い人たちにどういう方向を示しているか伺いたい。

髙野学長(以下、髙野) 大学が求められているのは人材育成です。グローバル時代に対応できる人材育成を目指していくことにつきると思います。

岸井 具体的には語学、異文化理解ですか。

髙野 語学は当然として、異分野、他分野の理解です。高度な専門を持ち、異分野を理解するというのが大学での教養で、教養教育の重視です。それにもう一つ、大事なものは改革に挑戦する意欲です。これは専門教育だけでは難しい。本学では5年前に学部横断型の教育機関「チャレンジセンター」を作りました。総合大学のメリットを生かし、いろんな分野の人間が集まって、新しいプロジェクトに挑戦しようというものです。学生は、50人以上の仲間を集めて新しいことに挑戦しています。これは人材育成につながります。

岸井 興味あることですね。具体的には。

髙野 特に活躍したのはソーラーカーで、国際ソーラーカーレースで優勝しニュースにも取り上げられました。地道なものでは障害者の支援などもあります。リーダーになるのはすばらしい学生で、希望通りのところに就職もしています。ミーティングを見ているとリーダーシップを発揮していて楽しみになります。

岸井 ユニークですね。実績が世界に伝えられると、モチベーションも違いますね。知り合いの自動車メーカーのトップにも関心事だったようです。グローバルな人材育成のためには、異分野、異文化への理解が大切です。特派員時代に体験したことですが、必ず日本の文化について聞かれました。日本史が好きで勉強していたつもりですが、歌舞伎や能、相撲などについて聞かれた時、答えられず絶句することもありました。日本の文化を知ることの重要性を痛感しました。


髙野学長

髙野 大学入試の問題もあるかもしれませんが、日本史を勉強してこない。創立者の松前重義は建学の精神の一つに歴史観に重きを置いています。歴史を学べと言っております。あらゆる面からものを見て、考え、学ぶのが重要だと。この精神を生かして本学で具体的に取り組んでいるのが、「現代文明論」という授業です。これは松前が1960年代から始めて一人でやっていた授業でした。現在も全学生必修です。現代文明論は、現代文明は何が問題か、平和、人種、格差の問題だと。そういうことをみんながきちんと勉強します。その中で歴史観が重要になっています。当時からグローバリゼーションを考えていたのです。

岸井 私の推測ですが、松前先生は戦争前から苦労している。平和主義者のため、懲罰的に二等兵として戦争に行かされ、九死に一生をえた。基本的に現代文明とは何なんだ、これが分からないために、日本は無謀な戦争に突っ込んだという思いがあったのではないでしょうか。

髙野 全くその通りだと思います。私どももそういう認識です。結果として建学の精神に入っているのではないでしょうか。

岸井 福沢諭吉が、幕末封建から明治維新に「学問のすすめ」を書いたように、ちょうど戦前から戦後を経験した松前先生も感じたのでしょうかね。「現代文明論」の取り組みは、いいですね。時代的にも。他大学でも同様の授業がありますが、リーダー論が多い。しかし、文明論が基本にないと十分じゃないとお聞きして感じました。

髙野 「現代文明論」は、在学生には難しい内容ですが、卒業生のアンケートでは評価が高い。社会に出てから現代文明の中での自分の立ち位置を実感することが多いようです。

オピニオンの一覧