歴史観に裏打ちされた人材、リーダー育成が急務

岸井 その中でもう一つ感じるのは3・11ですね。米同時多発テロの9・11につぎ、世界を変える、変えた日として宿命的に考えないといけないのかもしれません。

髙野 人間、自然、社会をもう一度見直すべきだと感じます。人間、自然、社会は建学の精神に入っています。自然観、歴史観、世界観をきちんと学生の時に学べということです。3・11以降は、人材育成が急務だと感じます。大学の貢献は知識の集積だけでなく、社会的価値をもった新技術にも貢献すべきだと思いますし、重要性がさらに増しています。

岸井 特に震災。地震、津波、原発事故。根源的な問題が突きつけられているんでしょう。たとえば地震による津波ですが、過去を軽視しすぎたのではないか。原発も本当に想定外だったのか。技術面のところの貢献はあるはずですね。

髙野 技術を使うのは人間なので、一番重要なのは社会のリーダーをどう育てるか。我々は、チャレンジセンターという学部横断型の取り組みをしているが、こういう中からリーダーが出てくると期待しています。工学部と文学部の学生がいっしょになって、お互いに資質の違いを経験する。そういう経験を大学生の時代からやるのが重要ですね。

岸井 震災を受けて強化すべきものは何でしょうか。

髙野 研究者は独立で研究、教育をするが、社会を作るために必要な総合的な組み合わせ、枠組みで社会に貢献できていない。総合大学としての責任を感じるようになりました。本学には土木に津波専門家もいるし、原子力の専門家もいる。海洋学部もあり、社会を構成している各部分を持っている。それらを総合した新しい技術開発、社会の創造に向けた取り組みに欠けていたのではないかと思いました。

岸井 取材する側としても、ほんとにどこまでわかっているの、専門家はいるのと思う。こちらの勉強不足もあるかもしれないが納得して自信をもって判断できない。

髙野 専門家の怠慢でもあると思います。技術、情報の評価など、自分たちが持っていても社会に伝える努力が十分ではなかった。これからは一般の人たちや、社会に提供することが重要になります。ただ、社会に提供することは難しい。丁寧な情報提供、情報の評価が必要です。でもやっていかなければなりません。原子力工学科があるのに何も提言できないのでは意味がない。今までは個人の見解だったが、学会として大学として整理し誤解を招かないようなわかりやすい情報提供がこれから必要になるでしょう。

岸井 3・11では、医療チームや学生ボランティアが現地に入ったのでは。

髙野 最初に行ったのは医療チームです。全部で61名です。学生はたくさん行っています。チャレンジセンターでは建築関係のチームが行って、石巻と大船渡に集会所を作り、大変喜ばれています。地元の大工さんらに指導してもらいながらですが、社会に役立つと感じたようです。

岸井 若い人たちの目の色が変わりますね。都会育ちが多いが、大変な状況におられる人たちを前にして、弱音を吐いている場合ではない。人生観が変わりますでしょう。

髙野 大学としてはできるだけボランティアに出したいので、今は被災地限定ですが単位を出すようにしました。ボランティアやインターンシップは大事です。教・職協働でいい社会人を育てるようにしています。

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