広い視野持った理系の人材育成が目標 サイエンス・マイスター育成プログラムについて聞く

--サイエンス・マイスター育成プログラムにも、その精神が受け継がれているわけですね。学部生が扱う高度な機器類は、どんなことに使われるのですか。

 内田 例えば、携帯電話に使われる半導体はミクロ以下のレベルで加工します。またヨーロッパ諸国には鉛のような有害物を含んだ工業製品を輸出できなくなっていますが、非常に微量なものであっても鉛の有無を確認する必要があります。あるいは、精巧に作られた偽札もインクに含まれる不純物の割合で見破ることができます。これらミクロやナノ(1メートルの10億分の1)の世界での元素分析などには、高度物性評価施設にあるような機器類が欠かせません。

 ある事件では、「スプリング8」という大がかりな分析装置で、ヒ素に含まれる不純物を鑑定した結果が容疑者特定の決め手になりました。高度物性評価施設には「スプリング8」のような大規模な装置ではありませんが、高度な分析機器類が集約、設置されています。原子の世界をのぞく電子顕微鏡は、人の声の振動によっても画像が影響を受けてしまうため、部屋の床の周りを数メートルも掘って、車などの外部からの振動を防ぐようにしてあります。


利根川教授

 利根川 はやぶさが宇宙から持ち帰った微粒子の分析にも、こういった高度な分析機器類が使われています。サイエンス・マイスターのプログラムでは、このような高度な分析機器類の原理から学び、何ができるのか、どの程度の精度があるのか、といったところまで理解し、科学する目をはぐくんでいきます。物事の本質を見抜く分析する力を持った学生を育てるのが目標です。

--サイエンス・マイスターから、ノーベル賞受賞者が出るかもしれませんね。

 内田 サイエンス・マイスターには、ぜひ、大学院に進学して研究を続け、高度な機器を自在に使いこなす研究者や、企業の即戦力として活躍できる人材になって欲しいと考えております。このプログラムでは、ひとつの分野に特化するのではなく、しっかりとした歴史観、世界観、人生観など、広い視野を持った理系の人材を育成し、社会に貢献する人材を輩出したいと考えています。

 利根川 サイエンス・マイスターは複数の高度な分析機器類を使いこなせる研究者や、先端技術の開発に携わる企業の即戦力として期待されます。このプログラムは副専攻なので、それぞれの学科の学問も並行して学ぶことで、多才な人材の育成が可能です。研究者になる道も開けますし、例えば、たんぱく質の分析装置の開発でノーベル化学賞を受賞された田中耕一さんのような、企業での研究でも即戦力として活躍する人が出てくることも期待されます。サイエンス・マイスターを受講した学生から、ノーベル賞を受賞するような優秀な科学者や研究者が育っていくことを期待しています。

東海大学サイエンス・マイスター育成プログラム推進・運営委員会副代表
教育支援センター所長 教養学部教授
内田晴久
1958年5月25日生まれ。1981年東海大学工学部応用物理学科卒業。1983年同大学院応用理学研究科修士課程修了。マックスプランク金属材料研究所研究員。1987年シュツットガルト大学化学科博士課程理学博士。2002年東海大学教養学部教授。応用物理学会、日本金属学会、エコマテリアル研究会などに所属。人間環境学科で、専門は材料学、リサイクル、環境科学。

東海大学サイエンス・マイスター育成プログラム連携・協力委員会委員長
学長室次長 大学評価室長 理学部教授
利根川昭
1960年1月9日生まれ、1982年東海大学理学部物理学科卒業。1984年同大学院理学研究科物理学専攻修士課程修了。1991年同大学院理学研究科物理学専攻博士課程博士(理学)。2004年東海大学理学部教授。日本物理学会、プラズマ・核融合学会などに所属、物理学科で、専門はプラズマ物理学。

※副専攻:東海大学では複合的な視野をもった人材を育成するために、複数の専門分野を学べる「副専攻制度」を実施しています。その数は70を超えるコース(2011年度)があります。ひとつの副専攻コースの科目から20単位以上を修得すれば、副専攻が認定されます。所属する学科の専門に加えて、第二の専門分野を学ぶことは、就職活動や、卒業後の実社会での活動にも有効です。

関連リンク:サイエンス・マイスター育成プログラム

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