インタビュー:工学部・木村英樹教授 ソーラーカーレースで連覇 学生は社会性身につけた

--留学生も参加していたのですか。

 木村 学生18人のうちサウジアラビアからの留学生が3人います。意外と思われるかもしれませんが、サウジアラビアはソーラーエネルギーに関心が高いです。砂漠ですからもともと日照条件が良好なので、今から脱石油社会を見据え、ソーラーエネルギーを導入し、石油が枯渇しても持続可能な社会を築いていこうとしているのです。石油資源は長くてもあと40年ぐらいだと思います。サウジアラビアはまだ産業が発達段階なので、そういうところも含めて国を担える人材になってもらいたいという方針のもと、王費留学生は年間3万人います。そのうち日本には500人ぐらい、東海大では50人ほどのサウジアラビアからの留学生が学んでいます。

 彼らは運転がうまく、手先が器用で驚きました。自動車にカーオーディオを搭載するなどの作業も経験があるようで、電気配線などがとても上手です。優勝して「いい経験ができて良かった」と言っていました。彼らは敬語もきちんと使います。日本と共通する部分があるのではないでしょうか。目上の人を敬うとか礼の部分を大事にするとか、文字が面倒だとか(笑い)。英語がネイティブ並みに会話できた点も、チームにとって大きな力でした。

--学生時代からソーラーカーにかかわる研究をしていたのですか。

 木村 それがそうではなかったのです。学生時代は半導体光センサーの研究をしていました。太陽電池にちょっと近いかな、というくらいで直接ソーラーカーにつながるような研究はしていませんでした。私は95年に教員として電子工学科(当時)に配属され、松前義昭先生(現 学校法人東海大学副理事長)から96年に「ソーラーカーレースがあるのだけれど見に来ない?」という感じで誘われてから、いつの間にかこんなふうになっていたというわけです。飛行機、新幹線、クルマなど、乗り物全般に関心がありましたので、それがバックグラウンドにあったのと、実験が好きでモノを自作したりしていたので、適性があったのではないでしょうか。

 指導していて楽しい部分もありますが、つらい部分もあります。単純にチームが車を開発し、それが走っているのを見たり、たまに自分でもテストコースを走ったりするのは楽しいですね。つらい部分はいろいろな調整作業です。企業と企業、企業と大学、大学の中での様々な調整ごとです。あと大変なのは資金の工面などです。

--学生、そしてエネルギー問題に関心のある高校生にアドバイスをお願いします。

 木村 エネルギー問題や環境問題は地球規模で起きていて、非常に大きい問題になってしまったため一人の力ではどうにもなりません。今ある技術を寄せ集めても太刀打ちできないでしょう。とにかくチャレンジングに新しい技術を開発していくとともに、人やモノやいろいろなものを巻き込んで、大きく展開していく能力が必要になると思うのです。昔は研究室に引きこもって研究していればそれなりに結果は出ましたが、今は表に出て研究していく時代なのではないでしょうか。実際、大がかりな研究はプロジェクト研究になってきています。ソーラーカーにもステッカーがたくさん貼ってありますが、ステッカーの数だけ協力者がいるということです。

 あとは、自分自身で物事の問題を発見して解決し、判断することです。人が言うからそうなのかなと簡単に思わず、自分の頭で考えて判断できる人間になってほしいです。世の中、けっこうウソが多いと思いますよ。私は高校時代までは、あまり勉強はできませんでした。自分の頭で考えた答えが教科書とは違っていたのです。

--チャレンジセンターではさまざまな経験をすることができますね。

 木村 やる気を持って頑張ってもらえれば、伸ばせる場はいくらでも用意されているのが東海大学です。逆にそういう学生に来てほしい。せっかくこういう場があるのだから、寄らずに帰ってしまってはもったいない。今は混とんとしているから答えがそう簡単に見つからない時代ですが、それでも一つの方向に突き進んで、壁にぶち当たっても突き進まないと、何をやっているか自分でわからなくなってしまいます。多様な価値観が認められているからこそ、昔より突き進む努力がより求められているのかもしれないですね。

 研究者やエンジニア、技術者は根幹が一緒だと思います。ほかの業界の人と話していて分野が違っていても、意外と話が通じるのです。勘所が一緒なのだと思います。いろいろな問題に関心を持って取り組むことも大事ですが、それと同時に反対側では一つのことに取り組んでしっかりその道を究めるとのも大事なことだと思います。

東海大学工学部電気電子工学科教授
木村英樹
1964年7月27日生まれ。東海大学工学部電気電子工学科 教授、東海大学チャレンジセンター次長。1988年東海大学工学部電子工学科卒業、1994年東海大学大学院工学研究科電子工学専攻博士課程後期修了。博士(工学)。日本太陽エネルギー学会、応用物理学会、電気学会などに所属。主な研究分野は電気二重層キャパシタによる高効率エネルギー貯蔵システム、鉄系アモルファスコアを用いたブラシレスDCモータの開発、高性能ソーラーカーの開発など。主な著書には、2006年 「エコ電気自動車のしくみと製作」オーム社、2010年 「世界最速のソーラーカー」東海教育研究所、2011年 「ソーラーカーで未来を走る」くもん出版。

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