インタビュー:健康に老いることを目指して  抗加齢ドックに携わる西崎泰弘准教授

 健康に年を重ねることは、多くの人の関心事だ。現在の老化度を知り、今後の健康に役立てる予防医学として抗加齢医学が注目を浴びている。「抗加齢ドック」を実施している東海大学医学部付属東京病院(東京都渋谷区)副院長の西崎泰弘准教授に抗加齢、予防医学について聞いた。【毎日新聞社デジタルメディア局・銅崎順子】

--抗加齢医学とは、どのようなものですか。抗加齢、アンチエージングと聞くとしわ取りやコラーゲンなどを想像してしまいます。

 西崎副院長(以下、西崎) 年齢を重ねるとしわができる、髪が薄くなるなど様々な「負の変化」が身体に出てきます。その増えてゆく不利な変化を、何らかの医学的な介入や健康増進的な指導で回避したり軽減するのが抗加齢医学です。しわ取りや抜け毛対策などはひとつの分野ではありますが、見た目が若くても血管や内臓がボロボロだと意味がありません。食事や運動に関することを中心に生活指導をすることで、血管や内臓の老化を遅らせることができます。抗加齢医学は健康寿命の延伸、健康で長生きするためにどうすれば良いかを追求する医学分野なのです。

 抗加齢医学は「究極の予防医学」とも云われています。予防医学には1次、2次、3次という段階があって、現在広く行われている健康診断、メタボ健診やがん検診などは、「早期発見、早期治療」を目指す2次予防です。これに対し1次予防は、病気自体を遠ざけようというもので、健康増進が当てはまります。年を取ることは、病気が発生しやすくなる最大要因ですが、アンチエージングはできるだけ良くない要因を除いていこうというものなので、1次予防に含まれます。一方アンチエージングは、病気へのリスクを軽くするものであっても、不老不死を目指す学問ではありません。人が老いてはいくのは当然と受け止めつつ、生活の改善によって病を予防し、健康で長生きすることを目指す学問なのです。

 アンチエージングの中で、肌や髪など「見た目の老化対策」はわかりやすい人気のある分野です。それはそれで大切で、活力を持って長生きするためには「自分の好きな自分」であることが必要ですが、見た目ばかりが先行してはいけません。我々内科医が考えるアンチエージングは、命に直結する疾患を起こさせないことが重要と考え、健康寿命の延伸のための抗加齢ドックを開設しました。

--抗加齢医学は、体の内側のアンチエージングなのですね。実施している抗加齢ドックとは、どのようなものですか。人間ドックとの違いは?

 西崎 通常の人間ドックは、がんや生活習慣病などが今あるかどうかチェックしますが、抗加齢ドックは、それらが発生する傾向をとらえますから、人間ドックよりも感度の高い精密な検査や一般には行わない検査をいろいろ実施します。例えば、「人は血管とともに老いる」と云われますが、動脈硬化はさまざまな病気の原因になります。日本人の3人に1人が心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞など血管の病気で亡くなりますが、それは動脈硬化が原因です。動脈硬化が進んでも自覚症状はありません。抗加齢ドックでは血管の硬さ、詰まり具合など詳しく検査し、現在の状況や今後の傾向を読み取ります。また、酸化や抗酸化をチェックします。これらのバランスが崩れても何も感じませんが、抗酸化力が落ちた状態が長く続くと例えば臓器が痛んだり、早く動脈硬化が進んだり、発がんリスクが高くなります。通常のメタボ健診などに入らないものをさまざまと調べています。このほかホルモンバランスや、免疫バランスも調べます。兆候が出る前の「負の変化」を見つけ、問題を最小限に留めるための生活指導をします。

 抗加齢なので、加齢がもたらすこれら負の変化に抗うための指導を最も重視しています。医師面談は30分ですが、各個人のファイルを作り、運動や食事、サプリメントの専門家がアドバイスを行います。年齢を経ることで、個人差はどんどん開いてゆきます。すなわち、65歳の人には65年間の人生が体のいろいろなところに刻まれている訳です。その人その人の問題点を伺いながら指導するのが、このドックの使命であり最大の特徴なのです。

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