インタビュー:地震はいつ来るのか 予知に挑む長尾年恭教授

 多くの人命を奪った東日本大震災から1年。もし、地震予知ができていれば……多くの人の頭に浮かんだことだろう。難しいと言われている地震予知を研究している静岡市清水区の東海大学海洋研究所地震予知研究センター長、長尾年恭教授を訪ねた。【毎日jp編集部 銅崎順子】

 --地震予知ということですが、どのような研究をしているのでしょうか。

 長尾教授(以下、長尾) 地震予知研究センターは1995年4月に発足しました。95年というと阪神・淡路大震災が1月に発生したので、震災を受けて同センターを設置したと思われがちですが、震災の前から設置計画がありました。静岡県は東海地震が来ると言われているのに、その当時、地震の研究者は県内にいなかった。それならば地元住民のために何かしましょう、と東海大学が研究センターをスタートさせることになったのです。

 このセンターの一番ユニークなところは、地震計がないところです。地震計は、地震が来ないと動きません。地震計で地震予知はできないのです。地震予知をするためには、地震計が動く前に地下で起きていることを観測して判断することが必要で、東海大学はこれに挑戦しています。実際には、地震計がないわけではありませんが、地震予知は地震計を使う地震学者の仕事ではないというのが最大のメッセージです。

 我々の研究は、地震の前に何が起きるかに着目しています。何が起きるかというと、一つは電磁気学的な異常です。昔で言えば、「ナマズが騒いだ」などという言い方がありましたが、電磁波の異常が地震の前に起きることがはっきりしてきました。また井戸や地下水に変化が見られないかということも大事です。最近の進歩は、地震学者以外の統計物理学や破壊の物理学など物理学者が参入していることです。東海大学ではこうした物理学者と地震学者との橋渡しをしています。地震予知って言うとほとんど超能力とか予言、占いと紙一重の捉え方をされます。実際、週刊誌などで取り上げられる地震予知は、占いみたいなものです。地震雲はありませんし、思い込みなのです。静岡で見た“地震雲”でアメリカの予知をしたりしますが、ほとんどは予知と言えないものです。

 割り箸が弱いところから折れるように、物が壊れるときは弱いところから壊れます。地震も同じようなものです。地面の中は不均質なので、必ず先に壊れるところがある。予知といっても例えるならがんの早期発見と似ているかもしれません。地面の中で一番初めに壊れるミシミシピキピキを察知することです。臨界現象と言いますが、ものが壊れる直前の状態を判断することが物理学の発展によってできるようになってきました。

 我々は、臨界現象の物理学と地震の前におきる電磁現象を調べています。電磁現象は、例えばラジオに雑音が入ることです。特に中波帯ですが阪神・淡路大震災の時は地震の前に、すべての放送が聞こえなかったくらい雑音が出た。そういう現象があります。電離層の異常などを使って予知情報を配信している会社もあります。一般的には予知はすごく難しいし、皆さんが考える予知研究はできていないのが実際です。我々は、破壊の物理学、ものが壊れるときは前兆がある、このセオリーに則って研究をしています。

 天気予報が進歩したのは、人工衛星による観測やシミュレーションができるようになったからです。本当に地震学が進んだのはここ20〜30年。日本でばらばらでやっていた地震観測が統一されるようになったのは阪神・淡路大震災以降です。この震災後、地震計の設置が進み台数が増えました。阪神・淡路大震災以前、観測された地震は1日20〜30回だったのが、今は1日400回くらい観測されています。非常に小さい地震も観測できるようになったので、地下のゆらぎというか、ひずみのたまり方がわかるようになった。コンピューターの進歩でこれらの情報を使い地下天気図が作れるようになりました。天気図なので必ず雨が降るとはいえませんが、この週末は大丈夫ですよという地震安心情報は出せるようになったわけです。

 地震予知機という機械はないので、地震学だけでなく測地学や地下水の情報、コンピューターシミュレーションなど複数の手法を組み合わせることで、異常を計測することが大事です。今の日本ではできていないので、東海大学ができるようにしたい。五つのうち四つ異常があれば、「8割の確率でマグニチュードクラスの地震が来る」「地震が近い」といえる。100%とは断言できないが、科学なのでトレーニングをして計測することで精度は上がります。地震の前兆現象がわかってきていますので、情報は色々出せるのですが、発表システムがないのです。

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