インタビュー:中嶋卓雄教授

 太陽光や風力などの様々なエネルギーを電力に転換する再生エネルギーが注目されている。東海大学熊本キャンパス(熊本市東区)でも、植物工場に再生エネルギーを活用するなど本腰を入れて研究に取り組み、電子やロボット技術とも連携を図った新たな産業構築を模索している。2013年4月には同分野などを研究する新学部「基盤工学部」の設置が予定されている。新学部開設準備室の室長も務め、コンピューターネットワーク、ネットセキュリティーを専門とする中嶋卓雄教授に、再生エネルギーの展望を聞いた。【聞き手・毎日新聞デジタルメディア局 江刺弘子】

 --再生エネルギーを使った研究とは、どんなものでしょうか。

 現在東海大学では、再生エネルギーを使って植物を生産する工場を動かしていて、メーカーとも共同研究を始めています。再生エネルギーから得られた電力で野菜を栽培し、ロボットを使って湿度や風向きなど植物工場内で記録したデータを自動的に収集したり、得られた観測データをスマートフォンで可視化したりと、さまざまなデバイスに広げていく試みを行っています。

 --単に太陽光から野菜を生産するだけではないのですね。

 重要なのは再生エネルギーとさまざまな分野を関連づけて産業を構築することです。これまでは電気なら電気だけ、ロボットならロボットと、それらの技術や考え方が農業につながることはありませんでした。そこで私が取り組む植物工場では、エレクトロニクス技術との連携を図り、農業を1次産業から6次産業(※)に変換させるといった役割を考えています。

 ※6次産業とは=農産物を生産(1次産業)するだけでなく、食品加工(2次産業)や流通、販売(3次産業)にも総合的にかかわることにより、それらの付加価値を得て農業を活性化させようというもので、多角的な農業経営のこと。

 --農業と電子技術との融合が今後求められてゆくのですね。

 現在の日本の農業には、豊富で高度な知識がありますが、それが集約されていない部分もあります。人間の感覚でやってきたものを数量化して、これまで農家が蓄積してきた知識をうまく数値で観測に適用できるようにシステムに生かしていきたいと考えています。そして再生エネルギーを使った植物工場で活用し、食品に加工する。さらに将来的には輸出産業にしていきたいと思っています。

 ただ植物の場合、たいてい収穫は年に1回です。つまり10年に10回しか実験ができないことになります。そのためには電子やロボットの技術も必要です。データを集積するための電子技術や、省力化するためのロボット技術などがそれです。熊本キャンパスがある九州はロボット企業や半導体工場も多く、「カーアイランド」や「シリコンアイランド」と呼ばれることもあります。アジアに近いという利点もあり、電子系、ロボット系の世界展開の機会もたくさんあるのです。

 --今後は「熊本キャンパスの植物工場産野菜」など、大学ブランド商品も出てくるのでは?

 品種改良といった化学的アプローチは考えていませんが、ソーラー発電やロボットと連携した植物自動生産キットなどの開発は検討しており、ブランド化につなげたいと考えています。 再生エネルギーを使って、世界中どんなところでも生産が可能な環境を作れば、日本でまだ栽培されていない植物を輸入して栽培することもできます。また、工場の中で栽培するということで完全に無菌な状態で生産することができ、食の安全に対する貢献もできる。太陽光と違う、LEDの光を使うことによって、甘さなどの変化を調べることができる。今挙げただけでも様々な方向からのアプローチが考えられ、こういった中から新しいブランドができるかもしれませんね。

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