実験通して科学の楽しさ 現場にノウハウ伝える 教育開発研究所所長・滝川洋二教授

 「科学の楽しさをすべての人に」をテーマに活動する滝川洋二さん。身近な材料を使った実験は、テレビ番組「世界一受けたい授業」(日本テレビ系)でもおなじみだ。東海大学教育開発研究所長を務める滝川教授に、科学の楽しさや日本の理科教育への取り組みを聞いた。【毎日新聞社デジタルメディア局・江刺弘子、動画は村田由紀子】

--活動の一つに「ガリレオ工房」がありますね。

 サイエンスプロデューサーの米村でんじろう君と1986年に作った団体です。米村君は開発のトップメンバーで、本当に毎月毎月新しい実験を持ってきてくれました。最初は米村君だからできるのだと思っていましたが、米村君がテレビで活躍を始めた頃から、ガリレオ工房に来ているだれもが実験開発ができるようになり、今では2000以上の開発実験があります。ぼくも新しい実験を毎月二つ、開発しています。

 特徴的なのは、だいたい100円ショップにあるもので実験をやっていることです。メーンは家庭でできる実験の開発です。2009年の国立教育政策研究所の調査によると、理科教材費の年間平均は子供1人に対して小学校で316円、中学校は341円でした。これでは先生にしてみたら、実験をやりたくても予算がないのが現状です。

 ガリレオ工房がこれまでに出した本は65冊あり、たいていの小中学校の先生は、工房の本を持っていらっしゃいます。ガリレオ工房の実験開発は、学校教育にものすごく影響を与えていると思います。

 --科学実験は「世界一受けたい授業」などテレビ番組でもよく拝見します。

 実験を通して、科学は暗記するものではなく、自分で手を加えて、驚く楽しさがあることを伝えることができるようになりました。

 先生がどんなにいいことだと思っても、知識として伝えるだけでは子供は受け入れにくく、実験を通して伝えることに意味があるんです。実験はおもしろく、一見するとそれで終わってしまいそうに見えますが、実際には日常生活にものすごく使われています。特に小中学校で学ぶ内容には、たくさんあり、そういうところまで伝えていくと、何で学ぶのかというのがわかります。

 --気付かないだけで、科学は日常の中にたくさんあるのですね。

 たとえば電柱の横から地面にむかって斜めにはってある黄色のカバーがかかった線をよく見かけるでしょう。あれは電線がお互いを強く引っ張っていると、電柱がその力で倒れてしまうので、そうならないように地面から引っ張っているのです。中学校で勉強する力のつりあいが実用されているケースです。

 --最近の子供たちを見てどのようにお感じになりますか。

 理科が好き、嫌いというのは、昔から変わっていないように感じます。昔の子供と異なるのは、不器用で経験が少ないということです。セロハンテープを切ってはるというだけなのに、どこで切っていいのかわからない。そういうお子さんもいます。学校で平等に実験をさせるというのは至難のわざ。一方で子供はものすごく好奇心はあるので、ちゃんと伝えていけば、おもしろいものはおもしろいと受け止めてくれます。そういう意味で悲観していません。

 ぼくは子供のころ、飛行機を作るにしても竹ひごを加熱しながら曲げたりして作ってました。その次の世代に出てきたのはプラモデル。学研の「科学と学習」は精巧な工作を付録につけていましたが、次第に「毎月の実験が面倒」との声があって、今では雑誌そのものがありません。

 そうなっちゃうと、原点に戻って、ただ与えるだけでなく、親子で一緒に何かを作るとか試してみようとかをやっていかないと、子供が自立して次々と学んでいくという環境が失われていきます。

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