南イタリアの八角形の城「カステル・デル・モンテ」にて

 --今後取り組んでいきたいテーマは?

 中世の人々の世界観の移り変わりでしょうか。例えばドラゴンの翼はロマネスク期の絵にすでにありますが、文章ではっきりと翼があると書かれるのは13世紀です。形の方が先行しているのは興味深いです。ロマネスク期は怪物や動物など訳の分からないものが生まれた時代でした。肩の力が抜けていて、へなちょこでのんびりしていて、ゆるやかでおおらか。モザイク画なんてまっすぐにならないところが良いです。2000年ごろから欧米でもロマネスクとは何なのかと問い直しが始まっていますが、ロマネスクのおもしろさを日本に紹介していきたいですね。

 古代から中世の床モザイクの研究もしています。壁は戦争などの混乱で破壊されることが多いですが、床まではがされることは少ないので、結構、残っています。アーカイブを作っているのですが、ロマネスクらしさ、ヨーロッパらしさがわかるのではないか、と考えています。

 --若者へのメッセージをください。

 一瞬一瞬を大事に生きてください。自分で考えて行動してほしいです。そして、本を読み、美術館にも行ってください。

◇金沢准教授からおすすめの本を紹介してもらいました。

<中世美術を知るために>
『イタリア古寺巡礼シチリア→ナポリ』(金沢百枝・小澤実、新潮社、2012年)
『大系世界の美術11 ロマネスク』(柳宗玄、学習研究社1972年)
『天使が舞い降りるところ』(辻佐保子、岩波書店、1990年)

<学生時代に影響を受け、学生にもすすめたい本>
『豊穣と再生』(ミルチャ・エリアーデ、せりか書房、1974年)
『偶然と必然』(ジャック・モノー、みすず書房、1972年)
『イメージと人間』(ロジェ・カイヨワ、思索社、1988年)

<小説・エッセー好きの学生に>
『犬隠しの庭』(多田智満子、平凡社、2002年)
『Xのアーチ』(スティーヴ・エリクソン、集英社、1996年)
『ほんとうはちがうんだ日記』(穂村弘、集英社、2008年)
『キンディッシュ』(阿部日奈子、書肆山田、2012年)

東海大学 文学部 ヨーロッパ文明学科 准教授
金沢百枝(かなざわ ももえ)
東京都生まれ。’97年、東京大学大学院理学系研究科植物学専攻にて博士号(理学)、2007年同大学大学院総合文化研究科にて博士号取得。’00〜’01年ロンドン大学付属コートールド美術史研究所留学。専門はロマネスク美術。著書『ロマネスクの宇宙―ジローナの《天地創造の刺繍布》を読む』(東大出版会、2008年)。2011年、島田勤二賞受賞。共著に『イタリア古寺巡礼シチリア→ナポリ』(新潮社)2012年など。新潮社とんぼの本HPにて【キリスト教美術をたのしむ】連載中。

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