都市の生き物は「お隣さん」 身の回りの自然から理解を 生物学部生物学科 竹中万紀子准教授

 ゴミを荒らす、攻撃するといった都市に生息するカラスの行動が各地で社会問題化している。カラス問題に象徴されるように、動物と人間の暮らしの調和が崩れていると言われて久しい。自然豊かな東海大札幌キャンパスで、鳥類生態学を研究する竹中万紀子准教授に自然界の生き物と人間との共存について聞いた。【聞き手・デジタルメディア局 江刺弘子】

 --都市にはカラスなどさまざまに鳥がいます。共存するには、どうすればいいでしょうか。

 私が調査しているのはカラスやコムクドリなど、私たちの周りにどこにでもいる鳥です。そういう鳥は都市が好きで来ているのではなく、公園や庭にある自然に依存して生きているのです。鳥たちに対しても「お隣さん」感覚でつきあうのが一番です。特にカラス類はつがいで縄張りを作り、暮らしています。長生きで、同じエリアでおそらく20年ぐらいは生きます。人間がどんなに追い出そうとしても、縄張りから出ていかないのですから、「それなら一緒にすもうよ」という感覚ですね。

 カラスにスズメ、ヒヨドリ、ムクドリ--市街地には、いわば何重にもさまざまな隣人の生活が重なっているイメージを描いてもらえばいいと思います。そして隣人が生を全うし、子孫を残すにはどうしたらいいかを考えると、いろんなことが見えてきます。

 その一つに、殺虫剤や除草剤を使うことは、鳥の暮らしを脅かすことに気付きます。以前、キャンパス内でサクラの木に毛虫がついたため、広範囲に薬剤を散布したことがありました。その翌日、コムクドリの巣箱をのぞくと、ヒナが全部、苦しんだ姿のまま死んでいました。

 毛虫がいやだったら、別の処分の仕方を考えるといった配慮が必要です。人間がちょっと我慢することも求められるのです。

 --人を襲い、ゴミを荒らすカラスが全国的に問題になっています。

 カラスの主食はゴミだとする説もありますが、決してそうではありません。いわばデザートのようなもの。あれば食べるけどなくてもいい。カラスがゴミを荒らすのではなく、ゴミの管理をきっちりとしない人間が悪いのです。

 カラスは虫やネズミ、カメムシなどの害獣、害虫になるものを食べてくれます。果実を大量に食べて、あちこちにフンをすることで、種子がさまざまな場所に広がり、森の草木にとってもありがたい存在です。

 またカラスは自発的に攻撃することはありません。いじめる人がいるからです。カラスが攻撃するという場所を調べてみると、人間が早朝の運動や散歩中に、石を投げつけるなどして、さんざん怒らせて、危害を加えていることがわかりました。そうするとカラスも、危害を加えている人間に近い年代や同じ性別の人間を襲います。それが人災でなくて何なんだろうと思います。

 さらに、襲われた人間が「カラスはけしからん」と自治体の窓口に駆除を要請し、行政の手によって巣を撤去すると、カラスは「人間は自分の子供も殺す悪いやつ」と、さらに凶暴になります。そういう図式を逆に戻して、「カラスを見ても、知らん顔してくださいね」とPRしていくと、だんだん攻撃も収まってきます。何もしない人に対してはカラスも無視してくれます。そういう場所を増やしていくといいのです。札幌市南区の南沢という地区では、住民のほとんどがこのことを理解してくれて、ハシブトガラスもおとなしくなりました。

 キャンパスの入り口でハシブトガラスのひなが枝に止まっていたでしょ。親は私がここに来てから、おそらく25年ぐらいはずっとここにいるんですよ。私が双眼鏡でのぞくから、いやがりますが、それ以外の人は関わらないので、ごく自然に暮らしています。理想的な姿です。

 --研究室の本棚に、「ヤタガラス」が描かれた日本サッカー協会のお守りが貼ってありますね。

 日本はもちろんアラスカ、カナダ、ロシアなど環太平洋地域の北に位置する国・地域を中心に、カラスにまつわる民話が多く残っています。カラスが知恵を使って、人間に光を奪い返してくれるといった内容のものが多く、人間側が一目置く存在として描かれています。

 日本でも戦前までカラスは最も身近な鳥の一つだったはずです。花鳥風月として水墨画に描かれています。嫌っていたら、カラスが描かれた掛け軸など、床の間にかけませんよ。

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