磁気浮上 リニアのほかにも 情報理工学部 中島孝教授

 温室効果ガスの増加による地球温暖化が叫ばれて久しく、最近ではゲリラ豪雨の問題がよく取り上げられる。こういった異常気象や未来の地球環境などについて、身近な「雲」の謎を通して挑み続ける東海大学情報理工学部情報科学科の中島孝教授に聞いた。【毎日新聞社デジタルメディア局 高橋望】

 ――雲のどういった研究をしていますか。

 地球環境における雲の影響力は非常に大きい。ご存じのように地表が太陽に暖められると海水が蒸発、その水分は「雲」となって大気の流れに乗り移動し、陸に雨を降らす。陸上の動植物はこのようにして得られた真水により生命を維持しています。また雲は、地球における熱の出入りの調整も行っています。太陽光を遮断し地球を冷やす雲があったり、逆に地表の熱が外に出るのを妨げる雲があったりするのですが、全体として雲は地球をバランスよく保つ働きをしているのです。

 しかし雲がどのように発生し成長していくのか、雲の内部はどうなっているかなど、はっきりと分かっていないことがたくさんあります。

 そこで人工衛星を使って地球全体を観測し、データを取得しています。リモートセンシング、遠隔計測ですね。地球は広いですから一番効率が良いのです。このタイミングでどうしてその雲が急に発生したのかなど、雲の成長過程を宇宙から観察しています。

 現在使っている観測衛星には、平面だけでなく立体的な構造が分かる「能動型センサー(レーダー)」が搭載されています。このセンサーを使うことで、これまでなかなか捉えられなかった雲の内部の様子が少しずつわかってきました。計算速度の速いコンピューターの出現も、より正確な観測やシミュレーションに大いに役立っています。短期的には、さらなる雲の解明が進むことで、台風や集中豪雨などの予測がより正確になされ、自然災害に関するリスクマネジメントがしっかりしてくるはずだと考えています。

 ――地球温暖化など気候変動についてはどう思われますか。

 現在、温暖化の原因についての調査が焦点となっています。ちっぽけな人間が何をやっても広大な地球が全て解決してくれる、というのはどうやら間違いで、自然界は消化しきれていない。やはり人間の活動が温暖化の原因ではないかという方向に傾いていますね。

 人間活動によって雲が変質している証拠があります。静止気象衛星「ひまわり」の画像にもはっきり出ていますが、人間が出す排ガスなどによって細い帯状の雲が発生しています。仮に雲が多くなれば地上まで届く日射量が減ることになります。

 地球温暖化の論議のなかで一つ問題なのは、予測値の誤差です。このまま温室効果ガスを出し続けた場合、平均気温の予測の上限と下限の差が約2度もあるのです。将来の気温が予測値のどこに入るかで、われわれの選択すべき道が異なってしまいます。実はこの誤差の最大の原因は雲についての理解不足ですから、雲の研究が大事になってきています。研究が進めば気候モデルの予測精度が格段に上がります。経済や政治など社会科学の分野にも深く絡んでくるのですが、今後われわれ人類が何をしなければならないかがはっきりと見えてくるでしょう。私の研究が温暖化対策に少しでも貢献できればと思っています。

 ――これ以外で取り組んでいるものを教えてください。

 雲の研究の延長線上にあるのですが、近年、再生可能エネルギーに関連する研究を開始しました。雲の有無やその厚さによって地上に達する日射量が変化するわけですから、太陽光発電パネルで発電される量が変わってきます。現在の雲の様子や、将来の到来がわかれば、どこの地域で発電量が足りなくなりそうだとか、そこにどれだけの電力を回せばよいか、ではこれだけは他の方法で発電しましょう、といった感じで、きめ細かなエネルギーのコントロールができるようになります。長足の進歩を遂げている気象学を駆使した雲の厚さや雲粒の大きさの計測などを推定するテクニック、そしてそれを使った複雑なプロセスの解明や計算技術をベースに研究課題に取り組んでいます。この研究の応用として2013年10月には豪州でのソーラーカー・レースの支援も行いました。

 再生可能エネルギーの研究を進めるにあたっては、発電や送電に関する「電気・電力」、そして電力をコントロールする「計測制御」の2つの学術分野の知識が必要になります。学生になったつもりでこれらの勉強を始めました。また、研究成果を広く皆さんに使ってもらうための組織、NPO法人「太陽放射コンソーシアム」を立ち上げました。

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